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中学受験における御三家・新御三家とは?
御三家の特徴と選び方
新御三家の特徴と選び方
まとめ

中学受験における御三家・新御三家とは?

御三家とは、もともとは徳川将軍家の一族である尾張、紀伊、水戸の三家が将軍家に次ぐ家格として有力な存在であったことに由来し、有名、有力、人気のあることを表す言葉です。中学受験における御三家とは、「開成」「麻布」「武蔵」を指します。当時からの偏差値や東京大学への進学率などからそのように言われています。それぞれ御三家と呼ばれるにふさわしい魅力があるのです。近年は新御三家と呼ばれる「駒場東邦」「海城」「巣鴨」の3校も注目を集めています。

御三家の特徴と選び方

御三家に共通して言えるのは「生徒の主体性を重んじる」という点です。学習も行事も生徒が自ら考え、実践しているからこそ、結果が出ているといえます。日頃からさまざまなことに疑問や問題意識を持ち、解決策を考えることが好きな子どもには適しています。

東京の御三家 男子中学校と女子中学校

東京の御三家と呼ばれる、以下の男子中学校や女子中学校の偏差値や特徴を解説します。

参考:偏差値一覧|四谷大塚ドットコム

【男子中学校】

1:開成中学校
1871 年に創立。2022年、東京大学の合格者数は148名。高校入試も行っています。「開物成務」「ペンは剣よりも強し」「質実剛健」「自由」の4つを教育の柱とし、行事の多くは基本的に生徒主導。運動会で優勝できなかったチームは坊主にするという暗黙のルールがあります。

2:麻布中学校
1895年に創立。2022年、東京大学の合格者数は64名。「自由闊達」「自主自立」の校風。制服や校則がありません。教養総合というテーマ性の高い多様な授業群の中から選択できる授業が特徴的です。行事はすべて生徒主導。

3:武蔵中学校
1922年に創立。2022年、東京大学への進学者数は19名。自ら調べ自ら考える「自調自考」を教育の柱とし、実験や観察など実践的な学びが中心で、教員も研究者が多いことが特徴です。行事はすべて生徒主導。

【女子中学校】

1:桜蔭中学校
1924年に創立。2022年、東京大学の合格者数は77名。「勤勉 ・温雅 ・聡明であれ」「責任を重んじ、礼儀を厚くし、よき社会人であれ」という理念の下、自立した女性を育成。礼法の授業があるのが特徴です。

2:女子学院中学校
1870年に創立。2022年、東京大学の合格者数は31名。プロテスタント主義で、明るく自由な校風。制服や校則がありません。授業は実験や体験など実践的なものが多いのが特徴です。

3:雙葉中学校
1909年設立。2022年、東京大学の合格者数は9名。幼稚園や小学校もあります。カトリック精神で、自己を確立し、他者と共に生きられる人間を目指しています。外国語と宗教教育が充実していて、中学3年生では全員がフランス語を学びます。

神奈川の御三家 男子中学校

神奈川の御三家と呼ばれているのは以下の中学校です。

1:栄光学園中学校
1947年創立。2022年、東京大学の合格者数は58名。自由な発想で問題を解決できる人材を育成。カトリックには珍しく、自由な校風です。上智大学の系列校。

2:聖光学院中学校
1819年にフランスで創立、日本では1958年に創立。2022年、東京大学合格者数は91名。カトリック精神で、社会に貢献できるリーダーを育成。予備校に行かなくても東大を目指せるという、教育面において面倒見のいい学校です。

3:浅野中学校
1920年創立。2022年、東京大学合格者数は36名。自主独立の精神で学業、部活動、学校行事でバランスを重視した教育を行っています。

横浜の御三家 女子中学校

女子中学校では神奈川御三家と呼ばれている学校はなく、横浜の御三家と呼ばれているのは以下の中学校です。

1:フェリス女学院中学校
1870年創立。東京大学合格者数は10名。プロテスタント主義で「For Others」という理念があります。自由な校風なのが特長的です。受験対策や補習などはないため、自分で課題を見つけて主体的に学ぶ子どもに適しています。

2:横浜雙葉中学校
1900年創立。2023年、東京大学合格者数は2名。東京の雙葉中学校と姉妹校。小学校があるのが特徴です。比較的校則は厳しめ。まじめな生徒が多いです。高3の運動会では「田毎の月」という伝統的な踊りを披露します。

3:横浜共立学園中学校
1871年創立。2022年の国公立大合格者数は合計で17名。プロテスタント主義で豊かな人間性を備え、世界平和のために貢献できる女性の育成を目指しています。校風は御三家の中では中庸的な雰囲気です。

西の御三家 男子中学校

女子中学校には西の御三家呼ばれている学校はなく、男子中学校は以下の学校です。

1:灘中学校(兵庫県)
1927年創立。2022年、東京大学合格者数は92名。「精力善用」「自他共栄」の精神。高校から数名入学しますが、中高一貫教育で、担任団が6年間変わりません。自由な校風で校則がなく、行事はすべて生徒主導。東京の麻布中学校と相互交換制度があります。

2:ラ・サール学園中学校(鹿児島県)
1950年創立。2022年、東京大学合格者数は37名。全国から生徒を受け入れ、生徒の半数は寮生です。寮ではスマホやゲームなどは禁止で、毎日3時間の義務自習があり、受験勉強の環境が整っています。

3:愛光中学校(愛媛県)
1953年創立。2002年には共学化。2022年、東京大学合格者数は17名。医学部への進学者が多く国公立大医学部合格者は73名。「世界的教養人」「愛と光の使徒」を育成することを目指しています。

新御三家の特徴と選び方

新御三家とは、御三家に次ぐ中学校です。それぞれの特色を見てお子さんの特性に合った学校選びをしましょう。

男子の新御三家は「駒場東邦」「海城」「巣鴨」です。

【男子中学校】

1. 駒場東邦中学校
駒場東邦中学校は「自主独立の気概」と「科学的精神」を持つことを理念とし、自主性に任せた自由な校風が特徴。2022年、東京大学の合格者数は60名です。

2. 海城中学校
海城中学校は自由な校風が特徴です。「新しい人間力」と「新しい学力」をバランスよく兼ね備えた紳士の育成を目標としています。2022年、東京大学の合格者数は57名。

3. 巣鴨中学校
巣鴨中学校は「文武両道」「努力主義」で、規律を重んじる校風。深夜の競歩大会、ふんどしで泳ぐ巣園流など伝統行事も特徴的です。2022年、東京大学の合格者数は8名。

女子の新御三家は「豊島岡女子学園」「鷗友学園女子」「吉祥女子」です。

【女子中学校】

1. 豊島岡女子学園中学校
豊島岡女子学園中学校は「道義実践」「勤勉努力」「一能専念」という教育方針です。授業前5分間の運針は特徴的です。2022年、東京大学の合格者数は14名。

関連記事:「6人に1人が医学部進学」の豊島岡女子が、22年度から完全中高一貫へ

2. 鷗友学園女子中学校
鷗友学園女子中学校は、「自由教育・全人教育・グローバル教育」をカリキュラムの基盤とし、自由な校風です。園芸の授業があるのが特徴的です。2022年、東京大学の合格者数は3名。

関連記事:女子新御三家、鷗友が「最高級幕の内弁当」の訳

3. 吉祥女子中学校
吉祥女子中学校は「知的探求心を育みましょう」「言葉と行動に責任を持つ」「互いの価値観を尊重しましょう」を校是とし、個性と自主性を重んじる校風です。高校2年生からは芸術系の進路選択肢があるのが特徴です。

関連記事:女子新御三家の吉祥女子、「脱・進学指導」が生徒主体の決断と自立を促す訳

最近の中学受験事情

首都圏模試センターによれば、首都圏の受験者数は2015年から9年連続で増加し、コロナ禍にもかかわらず23年には5万2600名と過去最多の受験者数になりました。さらに、私学の人気が高まっているだけでなく、難易度も上がっています。

受験者数の増加

現在の日本は、国際化、情報化の急速な進展や、社会構造も急速に大きく変化しています。社会で自立的に活動していくには、学力の3要素である「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「主体性をもって多様な人々と協働して学ぶ態度」をバランスよく育むことが必要であり、2020年度から始まった大学入試改革ではこれらの3要素を総合的・多面的に評価します。

ただし、これらの3要素を身に付けるには、今までのような学習方法では太刀打ちできないこともあって、中学受験者数が増えたといわれています。また、親がロールモデルにならない焦りや不安が、私学への期待に変わっているとも考えられます。

難易度の高さ

今後、中学受験にも「学力の3要素」は求められてくるでしょう。つねに問題意識を持って解決方法を考え、発信する能動的な学習が必要です。御三家・新御三家をはじめ私学では、能動的な学習のノウハウがある学校も多く、その点で私学人気が高まり、難易度も上がってくるでしょう。

まとめ

御三家や新御三家は、単純にその地域の「よい学校トップ3」というわけではなく、それぞれ違った魅力や特徴があります。しかし、さまざまな特色を持つ学校は御三家以外にもあり、何よりも大切なのはお子さんに合った学校選びをすることです。学校は多感な10代の大半を過ごす場所でもあります。ネームバリューにとらわれず、お子さんの興味、関心に基づき、その子らしい生活が送れる学校を選びたいものですね。

(冒頭の写真:Adobe fireflyによるAI画像)

武田さゆり 国家資格キャリアコンサルタント 中学高校国語科教員

4年制大学卒業後、金融機関へ勤務し、出産と育児を経て、公立・私立の中学高校国語科・論文科非常勤講師として17年間勤務。7校で教壇に立つ。現在は都内の私立女子校に勤務する現役教員。進路指導の中で、自分の将来像が描けていない生徒が多く、幼少期からのキャリア教育の必要性を強く感じ、国家資格キャリアコンサルタントを取得。現在、親子それぞれの強みを発見し、それを伸ばすためのワークを開発中。