記事の目次
シュタイナー教育とは何か?
シュタイナー教育はモンテッソーリ教育やレッジョ・エミリア教育とはどう違うのか?
シュタイナー教育を受けることのメリット・デメリット
シュタイナー教育を日本で受けるには?
実際にシュタイナー教育を受けた人の声
まとめ

シュタイナー教育とは何か?

シュタイナー教育とは、ドイツを中心に活動した哲学者、ルドルフ・シュタイナーの「アントロポゾフィー」という人間観、世界観を基にした教育です。その思想は、農業や医療、美術などの分野にも影響を与えています。シュタイナー教育は「自由への教育」と呼ばれていて、自分で考え、判断し、行動できる人間になることを目標にしています。アントロポゾフィーでは、肉体、エーテル体(生命体)、アストラル体(感覚体)、自我の4つが人間を形づくると考えており、7年ごとのその成長を支える教育が行われています。とくに幼児期は意思の力、感覚を育て、身体の十分で健やかな発達を促す教育を行い、子どもが「本物」に触れることを大切にしています。

シュタイナー教育の歴史

ドイツで1919年に設立された自由ヴァルドルフ学校を皮切りに、世界各地に広まりました。

日本では70〜80年代にシュタイナー教育に注目が集まり、87年に日本初のシュタイナー学校である東京シュタイナーシューレ(現在のシュタイナー学園)が東京都新宿区にスタートしました。時代の流れを受けて学校法人認可を受ける学校も増え、現在ではフリースクールや幼稚園、幼児教室など、シュタイナー教育を取り入れた教育機関が全国に広がっています。

シュタイナー教育の特徴

最も大きな特徴は、人間の発達を7年で一区切りと捉え、それぞれの時期に教育的課題を設定しているという点です。とくに幼児期に関連した3つの期間を見ていきます。あくまで年齢は目安で、個人によって成熟のタイミングは変わります。

0〜7歳  身体の健やかな発達を促す時期
8〜14歳  感情を十分に働かせる時期
15〜21歳 抽象概念、思考力によって世界についての包括的な認識を持てるようにする時期

これらの教育的課題を満たすために、シュタイナー教育ならではの環境づくり、授業づくりがあります。

シュタイナー教育の授業

とくに7歳までの幼児教育においては、遊ぶことや模倣を通して、身体の健やかな発達が十分にできるように支え、意思の力、感覚を育てていきます。「感情」や「思考」はまだ眠っている時期なので、それらを刺激しないよう、穏やかで柔らかく温かい環境が重要です。シュタイナー幼稚園や幼児教室のお部屋は、暖色系のカーテンをはじめとした布、手作りや木製のおもちゃ、表情が控えめなお人形など、シンプルなもので構成されています。また、子どもの生活リズムを大切にし毎日決まった時間に繰り返す生活を、とても大切にしています。

このほかにも

芸術:ぬらし絵や蜜ろう粘土、毛糸など、自然のものを使った手仕事
自然:本物に触れる自然遊び・外遊びの時間を重視。室内でも木の実や貝殻、木片などの自然物で遊んだり、草花を飾ったりと積極的に自然に触れる
音楽:ペンタトニック(レミソラシ)にその先のレ・ミを加えた「五度の気分の音階」に沿った歌や、ライゲン(リズム遊び)、オイリュトミーなどを楽しむ
お話:語り聞かせを通して子どもの成長にファンタジーの力を取り入れる

などの活動を通して、子ども一人ひとりの発達に合わせた見守り、関わり方をします。

シュタイナー教育はモンテッソーリ教育やレッジョ・エミリア教育とはどう違うのか?

シュタイナー教育が、モンテッソーリ教育やレッジョ・エミリア教育など、ほかの世界の幼児教育法と大きく違うのは、アントロポゾフィーの考え方が基礎にあるということです。7歳までをすべての土台となる身体づくりを中心にして捉え、その先に思考力の発達があると考えています。幼児期の子どもは全身が感覚器官だと考えていることからも、知的な発達よりも、子どもの意思や感覚が無理なく育つことをより重要視しているといえるでしょう。

シュタイナー教育を受けることのメリット・デメリット

・メリット
子ども一人ひとりの成長を大切にするので、子どもの個性を大切にしたいという思いに添った教育法です。幼児期は身体性を重視していることからも、より子どもらしい子ども時代を送ることができるでしょう。自然に触れ合うことや、食育を大切にしている園も多いです。また、シュタイナーの思想は生活全般に及んでいるので、家庭でも実践できる取り組みがたくさんあり、足並みをそろえることで、よりシュタイナー教育の恩恵を受けることができます。

・デメリット
子どもの生活リズムを大切にする教育方針から、日常での取り組みが必要になる場合があります。仕事や下の子の育児などで忙しい場合には、事前に確認をしておきましょう。また、小学校以降に関しては、フリースクールとして運営をしている学校も多いので、卒業資格をどのように得るかについて学校に確認をしたり、地域の在籍校に確認を取ったりする必要が出てくるかもしれません。

メリット・デメリットはどこで教育を受けるにしても発生します。家族が納得して安心して通えるよう、よく話し合って決めることが大切です。

シュタイナー教育を日本で受けるには?

海外教育のイメージの強いシュタイナー教育ですが、日本でも長年の実践があり、ドイツの教育を大切にしながらも、日本独自の文化や価値観に合わせた教育が行われています。園や幼児教室、学校は日本全国にあり、親子で参加できるワークショップなども開催されています。インターネットなどの情報収集はもちろん、日本シュタイナー幼児教育協会、日本シュタイナー学校協会などの全国組織に問い合わせる方法もあります。まずは加盟している団体を探してみてはいかがでしょうか。

日本シュタイナー幼児教育協会
日本シュタイナー学校協会

シュタイナー教育を含めて、日本国内でも少しずつオルタナティブな教育機関が増えています。

公立小が98%の日本で「オルタナティブスクール」が増える本当の価値

いろいろな選択肢があることを知ることで視野を広げ、これからの教育について考えていきたいですね。

実際にシュタイナー教育を受けた人の声

では、シュタイナー教育を実際に受けた子どもの保護者はどのように思っているのでしょうか?「子どもらしく成長できている」「個性を伸ばせる」「自主性が身に付いた」など、前向きな声が多く上がっています。また、「教育方針に合っている」「価値観がすばらしい」など、保護者自身が教育方針に共感をしたという声も多く聞かれました。

2022年12月 東洋経済新報社調査
海外教育に関する調査のうち、シュタイナー教育を実践したと回答した保護者85人

まとめ

その独特の教育内容が注目されがちなシュタイナー教育ですが、安心した環境の中で、子どもが子どもらしく、遊びを通して成長する、それを大人がサポートしていくという考え方は、多くの保護者の皆さんも共感するのではないでしょうか。シュタイナー教育に限らず、さまざまなオルタナティブ教育を知ることで、子ども一人ひとりの個性に合った園や幼児教室、学校選びをしたいですね。

参考文献
「月刊クーヨン」編集部. のびのび子育て. クレヨンハウス. 2010年
クレヨンハウス編集部編. おうちでできるシュタイナーの子育て. クレヨンハウス. 2009年
子安美知子 シュタイナー教育を考える. 学陽書房.1983
ルドルフ・シュタイナー. 子どもの教育. 筑摩書房. 2003
日本シュタイナー学校協会 HP https://waldorf.jp/

(写真:Adobe fireflyによるAI画像)

相原 里紗 保育士・コミュニケーションプランナー

大学卒業後一般企業に入社したが、保育士資格を取得し保育園に転職。同時に、都内の親子を対象に街中や地方での外遊び体験を提供するプログラムを自主開催する。子育てに軸足を移すためにフリーランスに。Web媒体を中心に、保育や子どもの発達、遊びのヒントになる記事を多数執筆。映画の広報や学校のパンフレット制作など、子育て教育系プロジェクトのコミュニケーションプランナーとしても活動している