東京電力の株主責任は明確にすべき、巨額賠償を払い続けるチッソの例が参考に

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 そうした点から、田中氏は「巨額賠償を払い続けている企業の例として、チッソを参考にすべきだ」と提案する。

チッソは水俣病の原因となったことで、多額の損害賠償を負うことになり、今なお訴訟を抱える。債務超過が続き、すでに2000年に上場廃止になったが、企業自体は破綻することなく存続しており、株式もグリーンシートで売買されている。
 
 純資産は昨年末でも787億円のマイナスと債務超過のままだが、実質的な資金繰りは国や熊本県などが請け負っていることで、経営破綻を免れている。経常利益ベースでは黒字が続いているばかりか、薄型テレビ需要のおかげで液晶材料が好調に推移し、10年3月期は過去最高の220億円の経常利益を計上している。

「東電も本来の収益力を勘案すると、資金繰りだけを政府保証にすれば、税金を投入することなく、将来利益を含めて賠償金や補償金に回すことができる。当然、株主への配分は著しく減ることになるが、100%減資は避けられる」と田中氏は推測する。

「今回の事故は想定外の天災がきっかけだとしても、その後の東電の対応には、経営陣の右往左往ぶりや隠蔽が事故を悪化させたとの指摘が出始めた。責任の所在は今後の調査結果を待つ必要があるが、何より、東北電力の女川原発は同様に地震と津波の被害に遭いながらも、きちんと冷温停止し、放射性物質の漏れも避けられている。この差がある限り、すべてを天災で済ませて免責(=国民負担)という対応は理にかなっておらず、国民負担の合意は得られない」と田中氏は力を込める。
(聞き手・構成 岡本 享 =東洋経済オンライン)
写真は東京電力・清水正孝社長 08年6月 撮影:今井康一

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