脱「経験・勘・気合」、戸田市が今「教育総合データベース」構築に心血注ぐ訳 教育データ利活用で不登校などプッシュ型支援
ただ、不登校に関してはサンプル数が少ないなど、現在対象としているデータだけでは分析が難しいなどの課題も見えてきた。デジタル庁の事業としては22年度末で終了となるが、そこまでの課題と分析結果を踏まえ、23年度以降も教育総合データベースの運用と分析に取り組む方針だという。
「将来的には、現場の自発的な取り組みとの相乗効果により、教育総合データベースが学校で十分に活用されていくよう整備していきたいと考えています」(山本氏)
実はすでに今年度、学校発の事例が出てきた。同市立喜沢小学校から、教育データをケース会議などに活用したいとの申し出があり、同市教委が、児童のデータを一元管理して参照できる校内システムを整えたという。

(写真:戸田市教育委員会提供)
「こうした自発的な動きが学校側から出てきたのは画期的なこと。同小学校は、企業と連携して米国の学習指導モデルを活用し始めたことを機に、教育データの利活用が必要だと考えるようになったそうです。産官学との連携を推進し、『凡庸な90点の取り組みよりも、60点でもいいから夢のある挑戦を』と伝え続けてきたかいがありました。こうした学校の主体性が、今後の教育総合データベース活用のカギになると思います」(戸ヶ﨑氏)
教育データの利活用に取り組む自治体はほかにもあるが、顕著な成功事例はまだない。同市の教育総合データベースの構築も、緒に就いたばかりだ。戸ヶ﨑氏は現状を「獣道を傷だらけで歩んでいる」と表現するが、少しずつでも前進していくことが何より重要だと語る。なぜなら、教育データの利活用を全国に広げたいと考えているからだ。
「データの標準化やデータフォーマットのオープン化を進めることで、ほかの自治体でも導入しやすい基盤づくりを目指しています。すでにガイドラインやアドバイザリーボードを公開していますが、本市のプロセスをどんどん参考にしてほしいのです。複数の自治体で取り組んだほうがより早く成果が出るはずなので、われわれも仲間が欲しい。組織体制もネットワーク環境も自治体ごとに違うので難しく、ここは大きな課題ですが、今後もノウハウを共有していきます」(戸ヶ﨑氏)
(文:國貞文隆、編集部 佐藤ちひろ、注記のない写真:風間仁一郎撮影)
東洋経済education × ICT編集部
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