脱「経験・勘・気合」、戸田市が今「教育総合データベース」構築に心血注ぐ訳 教育データ利活用で不登校などプッシュ型支援

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「今後は子どもたちのよさを徹底して伸ばすことを最優先すべき。そのためにも、全員の足並みをそろえるのではなく、まずは動き出し、困っている子にはプッシュ型で支援をしていく。そんな公正主義に立つことで、学力、いじめ、不登校、発達障害などさまざまな理由で取り残されている子どもを救っていくことができるのではないかと考えています。教育データの利活用は、まさにそのプッシュ型の支援の一助になると思うのです」

同市は16年と早い時期から、ICTの積極的活用や1人1台端末の実現に向けた環境整備を始めており、GIGAスクール構想の第2フェーズという側面からも、教育データの利活用は重要なテーマとなっている。

全国の自治体も取り組めるよう、ノウハウをオープン化

こうした背景から、「授業を科学する」「生徒指導を科学する」「学級・学校経営を科学する」という3つの方向性で教育データの利活用を進めているが、現在とくに力を入れているのが、「生徒指導を科学する」の部分だ。具体的には、不登校児童生徒の支援を目指し、主に前述のぱれっとラボの調査・研究・評価と、教育総合データベース活用の試行に取り組んでいる。

「2021年度の文部科学省調査でも不登校児童生徒が過去最多となりましたが、本市も例外ではありません。個人情報の保護措置を講じたうえで各データを連携させ、子どもたちのSOSを早期発見し、プッシュ型の支援を行いたい。教師も保護者も気づいていないけれど、データはアラートを発している。そんな先手の対応が、教育総合データベースの構築でできるのではないかと考えています」(戸ヶ﨑氏)

同市教委では現在、長期欠席に関する調査や、子どもの出欠・遅刻・早退の状況、いじめなどの記録、授業や学校生活に関するアンケート調査の回答などの各種データを基に傾向を分析することで、不登校のリスクを早期発見し、未然防止につなげることができないか試行錯誤している。

しかしデータベースの構築は、そう簡単ではない。データ解析を行う同市教委教育政策室政策担当指導主事の山本典明氏は、こう明かす。

戸田市教育委員会教育政策室政策担当指導主事の山本典明氏
(写真:戸田市教育委員会提供)

「まず子どものデータは各所でバラバラに保存されており、デジタル化されていない場合も多い。分野・組織・紙という3つの壁が立ちはだかっていて大変苦労しましたが、何とかこの1年でデータの整理は終え、データベースに必要な機能の実装などに取りかかっているところです」

扱うデータについても検討を重ねた。当初は社会経済的地位(Socio-economic Status/以下、SES)に関するデータの利用も考えていたが、検証をまったく進めていない状況で利用するにはセンシティブな情報であることを踏まえ、SES以外で関連のありそうなデータを使うことにした。

「例えば、センシティブな情報も『生活保護や就学援助の受給世帯率』『特別支援教育対象世帯の割合』『日本語指導を必要とする児童生徒割合』など、個人が特定されない形での利用は可能です。実際、こうしたデータを連携し、困難な状況でも学力や非認知能力を向上させている学校に共通する特徴も分析を進めており、学校経営と指導改善を目的とした各学校のカルテを作成したいと思っています」(山本氏)

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