脱「経験・勘・気合」、戸田市が今「教育総合データベース」構築に心血注ぐ訳 教育データ利活用で不登校などプッシュ型支援
22年4月からは、不登校児童の学びを支援する校内サポートルーム「ぱれっとルーム」を市内3校に設置。「これにより登校できるようになったケースが複数見られたほか、利用者やその保護者、導入校教員のアンケート結果でも高評価だったため、急きょ補正予算を組み、残りの市内すべての小学校にぱれっとルームを設置しました」と、戸ヶ﨑氏は言う。
ぱれっとルームでは、企業との連携により、心の健康観察アプリを児童のGIGA端末に入れて毎日の気分や体調を記録している。今後はさらなる支援のため、専門家による不登校対策ラボラトリー「ぱれっとラボ」が、その記録データに基づき効果検証を詳細に行っていく考えだ。
教育データの利活用は「プッシュ型支援」の一助となる
EIPPを推進すべく、2019年には教委の中に教育政策シンクタンクも発足させている。市役所の関係部署、大学、企業などが連携しており、アドバイザリーボードには、以下のような著名な専門家が名を連ねている。

(写真:戸田市教育委員会提供)
アドバイザリーボードはこれまで3回実施しているが、22年7月の2回目からはZoomで公開し、200名以上が視聴するなど注目を集めている。
このアドバイザリーボードで今、主な検討テーマとなっているのが、「教育総合データベース」構想だ。これはデジタル庁の「こどもに関する各種データの連携による支援実証事業」に採択されたもので、教委や市長部局などに分散している子どもに関わるデータについて、教育分野を軸に「教育総合データベース」を整備することを目的としている。
「データは冷たい、評価の材料に使われる、情報漏洩が心配など、いまだに皆さんもデータの利活用には不安感や抵抗感がありますよね。しかし、何とかそこを打破し、『誰もが、いつでもどこからでも、誰とでも、自分らしく学べる社会』の実現に向け、ユースケースを創出する必要があると考えています」
戸ヶ﨑氏がそう語る背景には、さまざまな教育課題に対する危機感がある。これまで日本の教育は、できないことをできるようにすることを最優先し、形式的平等主義に陥っていたと戸ヶ﨑氏は指摘し、次のように続ける。