中国経済の再開は世界経済にとって痛しかゆし 需要爆発で成長に寄与するがインフレ圧力も増す
昨年は米消費者物価指数(CPI)が一時9.1%上昇し、ユーロ圏では10.6%上昇となる場面もあったことを考えると、それほど大きな影響に見えないかもしれない。だが、中銀が2%のインフレ目標の達成にひたすら注力しているという文脈で見れば、この点は非常に重要だ。
BEのモデルがあり得ると示唆しているように、中国経済の回復を受け、米インフレ率が第2四半期(4-6月)も5%程度で推移するとすれば、5月の連邦公開市場委員会(FOMC)会合での利上げ停止観測を妨げる可能性がある。
ロックダウン(都市封鎖)下で低迷する中国経済と経済再開で活気づく中国では大きな違いがあり、世界経済にとってはナイジェリア1カ国分の購買力に匹敵する5000億ドル(約65兆円)の追加需要が生じる。
経済再開で5000億ドルもの追加需要が発生
こうした需要拡大を織り込む形でコモディティー(商品)相場は上昇する一方、サービス業や小売業は中国消費の盛り返しに備えている。
中国経済の一本調子の回復が見込みにくいのは確かだ。昨年終盤のゼロコロナ政策の急転換はまず経済活動にマイナスに働いた。感染や死亡率を巡る不透明感から、公衆衛生コストや景気の先行きも見えにくくなっている。コロナ禍を通じて刺激策が比較的抑制されていた点を踏まえると、他の主要国で見られたような繰り越し需要が中国でも生じるかは分からない。
ロシア産原油の価格上限設定や欧州の気象状況、石油輸出国機構(OPEC)による供給を巡る決定、小売りの商品在庫動向なども変動要因で、中国経済の再開による世界の物価への影響を打ち消すのか、悪化させるのか、どちらもあり得る状況だ。
だが、高頻度データによると、中国経済の低迷は既に終わりに近づき、コロナ感染の波も落ち着きつつあることが示唆されている。病院の救急外来患者が減少する一方、主要都市では地下鉄利用者が増えている。春節(旧正月)連休関連の初期データでは、旅行や映画興行収入が前年を大きく上回った。
広西チワン族自治区柳州市のパン・メイさんは春節連休に旅行を楽しんだ一人だ。大学院修士号取得に向けてマカオで勉学に励む長女に会うため、夫や息子らと共に現地を訪れた。
パンさんは「コロナ禍であまりにも長い間、中国本土内にとどまらざるを得なかった。本土外に家族を再び連れてくることができるのは素晴らしく、多くの人たちにとって久しぶりのことだ」と語る。
連休中の移動などによってコロナ感染の新たな波は避けられそうにないが、ワクチン接種の向上や自然免疫で約14億人の中国国民は1-3月(第1四半期)末までにコロナに対する抵抗力を高め、コロナとの共生に適応すると見込まれる。ロックダウンや感染防止策はもはや景気抑制要因ではなくなるだろう。