中国経済の再開は世界経済にとって痛しかゆし 需要爆発で成長に寄与するがインフレ圧力も増す

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供給面と需要面2つの経路でインフレ圧力に

中国発のインフレ圧力は2つの経路を通じて波及するだろう。

まず、コロナ感染急拡大に伴う相次ぐ欠勤や工場停止によって業務の継続が難しくなり、供給面でショックが生じる。中国製造業購買担当者指数(PMI)のサプライヤー納期指数は昨年末に落ち込んだ。これよりはるかに規模が小さいものの、コロナ禍に伴う最初のインフレ急上昇に拍車を掛けた供給混乱再現のリスクがある。

第2の経路として、通常の生活が戻り、購入が活発化することに伴う需要ショックが挙げられる。中国の石油輸入はコロナ禍で伸び悩んだ。主要道路や鉄道駅、空港ターミナルに人々が押し寄せる中で需要拡大期待が広がり、原油相場は昨年12月上旬の1バレル=76ドルから今月終盤には約86ドルまで上昇した。ゴールドマン・サックス・グループのベテラン商品アナリスト、ジェフ・カリー氏は105ドル以上に原油が値上がりする可能性があると指摘する。

こうした需給両面のショックによって、23年末時点の世界のインフレ率はロックダウン下にある中国シナリオに比べて1ポイント近く押し上げられる可能性がある。

BEの分析では米国やユーロ圏、英国に関しては約0.7ポイントの押し上げを示唆しており、世界的なインパクトに比べれば小さくなるとはいえ、米金融当局や欧州中央銀行(ECB)、イングランド銀行(英中銀)が市場想定よりも長く引き締めモードを続けるには十分だ。

世界のインフレ率を左右する中国経済の回復軌道や他の要因の動向を巡っては不透明感がなお強いものの、方向性は明確だ。08年の世界金融危機の最悪期に中国が打ち出した大規模刺激策は世界経済にとって間違いなくプラスだった。それに対し、23年の中国経済再開は痛しかゆしといったところがある。

原題:The World’s Next Big Inflation Surprise Is Looming in China(抜粋)

--取材協力:.

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著者:Enda Curran、Chang Shu、Bjorn van Roye、Tom Orlik

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