前澤友作氏「シンママ婚活アプリ」炎上の重大盲点 「性善説✕スピーディな開発」には到底適さない

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再婚した元シングルマザーも何名か知っているが、著者の直接知る限りでは、再婚してうまく行っているのは、母親が経済力と子育て能力が高い場合か、子どもが十分に成長して精神的に自立している場合、いずれかの場合も多いのではないかと推察する。

しかし、こういう女性は、「コアリー」のメインターゲットとしてまでは設定されていないだろう。

いきなり話がそれるようだが、古典物理学の難問に「三体問題」というのがある。かなり単純化して説明すると、「万有引力が働く3つ以上の天体の動きは、複雑すぎて予想できない」というものだ。2つ天体間の関係であれば簡単に解ける問題も、3者の関係となると、複雑化して解けなくなってしまうのだ。

シングルマザーの婚活は、この三体問題に例えられるのではないかと思う。子どもという3つ目の要素が入ることによって、とたんに状況は複雑になり、事態を単純化して捉えることができなくなってしまうのだ。

本アプリは、シングルマザーへの事前ヒアリングを重ねた上でサービス設計を行っているとされており、実際に「日本シングルマザー支援協会公認」というお墨付きも得たうえでサービス開始に至っている。

こうした経緯を見る限り、前澤氏の思い付きで拙速にサービスを開始した結果、多数の不備が発覚して炎上した――というわけでもないと思われる。

にもかかわらず、早々に問題が起きて炎上してしまったのは、サービス提供側に問題の多様さ、複雑さへの目配りが不足したことによるものだろう。

女性(シングルマザー)の視点は強調されていたが…

ニュースリース文を読む限りでは、女性(シングルマザー)の視点が強調されており、登録する男性側の視点、子どもの視点が欠落しているように見える。

今回の炎上事件をあえて一言でまとめると「三体問題を一体問題として単純に捉えてしまった」ということになるだろう。

特に欠落していたのが、「子ども目線」である。

子どもに関わるビジネスは、常に「子ども目線」から考えることが不可欠だ。しかし現実には、子どもの心の声を知り、拾い上げるのは難しいし、財布を握っているのは親であるため、どうしても親側のニーズを重視しがちになる。

われわれは、みな以前は子どもであったにも関わらず、ビジネスを行う側に立ってしまうと、とたんに子どもの気持ちを汲み取ることが難しくなってしまうのだ。

「炎上」からは見えてこない潜在リスク

前述したSNSの批判内容を越えて、本アプリのまわりには、様々なリスクと課題が広がっている。

1つめの「子どもへのリスク」についても、性的虐待のリスクに留まらない。恋愛と子育てが両立できる女性ならよいが、恋愛に走ることで、育児放棄につながるケースもある。 

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