高校新学習指導要領「総合的な探究の時間」 、3観点に即した評価のポイント 長期的な視点で指導や授業と評価を一体化へ

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2018年に改訂された高等学校学習指導要領で、それまで「総合的な学習の時間」とされていたものが「総合的な探究の時間」と変更された。具体的な取り組みについては、その目標とともに各学校で定めるよう求められており、今も内容や評価方法について悩む教員は多い。高校における「総合的な探究の時間」で重視すべきものは何か。育成を目指す資質・能力の3つの柱と、評価のための3観点とはどう結び付けていけばいいのか。京都大学大学院で教授を務める西岡加名恵氏に詳しく聞く。

教科と探究の相互環流で「学ぶ意義を感じる突破口」に

2022年4月、高等学校における新学習指導要領施行によって「総合的な探究の時間」が本格始動した。文部科学省の「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説」では、従来の「総合的な学習の時間」と「総合的な探究の時間」の違いを次のように説明している。

前者が「課題を解決することで自己の生き方を考えていく学び」を目指していたのに対し、後者では「自己の在り方生き方と一体的で不可分な課題を自ら発見し、解決していくような学び」を展開するとしている。先んじて新学習指導要領が実施されていた小・中学校と高等学校では、指導のポイントに違いはあるのだろうか。京都大学大学院教育学研究科教授の西岡加名恵氏は、基本的な発想は変わらないと説く。

「生徒自身が課題を設定し、解決していくという点は、高校での指導においても変わりません。ただし生徒の年齢に応じて、高校ではよりリアルかつダイナミックな取り組みが可能になります。また、普通科・職業科の別、受け入れている生徒の学力層や興味・関心などの違いもあるので、そうした多様性も考慮する必要があります」

西岡加名恵(にしおか・かなえ)
京都大学大学院教育学研究科教授。日本教育方法学会理事、日本カリキュラム学会理事、文部科学省「育成すべき資質・能力を踏まえた教育目標・内容と評価の在り方に関する検討会」委員など。『教科と総合学習のカリキュラム設計:パフォーマンス評価をどう活かすか』(図書文化)、『高等学校 教科と探究の新しい学力評価:観点別評価とパフォーマンス評価実践事例集』(学事出版)など著書多数
(写真:西岡氏提供)

取り組み内容が各学校の裁量に任せられているということもあり、現場の状況は「二極化」していると西岡氏は続ける。

「SSH(スーパー・サイエンス・ハイスクール)などの先進校では、私も驚くほどの探究学習がすでに行われています。一方で今も『探究って何をしたらいいの?』と言うような先生がおられるのも事実。とくにあまり学力の高くない学校だと、教員の士気も上がりにくいのかもしれません。でもむしろそうした学校ほど、探究学習が有効だという例もあります」

西岡氏の知るある高校では、生徒たちの学力がかなり厳しい状況にあった。同校の研究主任を務めた望月未希氏は、学校の立て直しを目指して、「地域に関わる活動をとにかく増やす」ような探究学習を推進した。地元の祭りへの参加から、獣害対策や森林保全、近隣の小学校への出前授業など――。小学生に教えるため、生徒たちは英語学習をやり直すことになったし、外来種や自然保護の知識も必要になった。さらにこうした地域での多様な活動の結果、生徒たちの不登校率が大きく下がり、進学・就職の実績が上がったという。

「さまざまな取り組みによって、生徒は旧来型の学力や教科学習の必要性も実感したのでしょう。何のために学ぶのかがわかれば学校に行く理由も明確になる。総合的な課題に取り組む探究学習は、生徒自身が学ぶ意義を感じるための突破口にもなるのです」

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