高校新学習指導要領「総合的な探究の時間」 、3観点に即した評価のポイント 長期的な視点で指導や授業と評価を一体化へ
「ポートフォリオの活用法やその意義について、教員と生徒との間でしっかりと共有しておくことが大切です。定期的にポートフォリオを編集すること、また記録を見ながら対話する『検討会』で教師と生徒の評価をすり合わせることも重要です」
学習指導要領の改訂で、育てたい資質・能力の3つの柱と学習評価の3観点が整理されたが、それに即した適切な学習評価を行うためには、指導や授業と評価を一体化させて行うことが効果的だ。これは「総合的な探究の時間」でも同様で、短期的な評価をしないこともポイントになる。生徒が探究するプロセスを多角的に評価することと、経緯をもれなく成績づけの資料にすることは、別のことだと西岡氏は注意を促す。
「課題設定のタイミングで課題設定の評価をし、まとめの段階でまとめ方についての評価をするような、分節化した評価はふさわしくありません。探究は年単位で取り組むことになるので、年度途中での通知表は、途中経過の指標を示すものとして捉えるといいでしょう」
相手が高校生なら、こうした評価の流れや目標も共通理解にしておくことが可能だ。検討会も決して頻繁に開催する必要はないという。だがポートフォリオを見ながら聞き取りを行いアドバイスをすることで、指導と評価が無理なくつながり、双方をシームレスに行うことができる。
「探究の指導や評価については、大学の卒業論文をイメージするとわかりやすいと思います。このまま進めていいのか、もう少しテーマを煮詰めたほうがいいのか、学生と指導教員は何度も話し合って方針を決めていきますよね。ただ、教職課程で卒業論文は必修ではありませんので、現在の教員の中には卒業論文を書いていない方もいます。そうすると、探究のプロセスは想像しにくいかもしれません。また、生徒たちの探究力を高めるためには、教科で身に付けた理解を使いこなせるレベルまで深く学ばせる指導も重要です。教師の持つ力量をさらに高めるような教師教育の充実が求められますし、高い力量を持った人々が教師として働きたいと思えるような雇用条件の改善も、政策的には求められていると考えます」
指導や評価について改善すべき点もあるものの、生徒との対話を重ね、目標や取り組み内容が確立され共有されれば、ルーブリックも効果を発揮するという。
「ルーブリックは正しく機能すれば、教員の『評価する目』を養ってくれるという利点もあります。どこかで作られたルーブリックを写してくるのではなく、教員たちが共同で生徒たちの作品などを見ながらルーブリックを作るワークショップに取り組むことをお勧めします。いちばん重要なのは、学校が大枠として設定する探究のテーマをどうするかですが、これは教員自身がワクワクできるようなことを選んでほしい。その背中を生徒に見せることで、生徒たちもきっと探究が楽しいと思えるはずです」
正解のない課題に向き合う「総合的な探究の時間」では、長期的な視点で、指導と評価を一体化していく感覚を身に付けることが重要だ。そしてテーマの決定に当たって必要なのは、学校の目指す理想や生徒の姿、教員自身の興味や関心を見つめ直すこと。楽なことではないが、教員にとっても得るものの大きい取り組みだといえるだろう。
(文:鈴木絢子、注記のない写真:nonpii / PIXTA)
東洋経済education × ICT編集部
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