"宿題を解くAI"が現実に登場「ChatGPT」凄い中身 小論文の執筆や数学、物理の問題もこなす対話型AI

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現時点のChatGPTは誤った回答や時代遅れの情報を返したり、根も葉もない理論や学説をでっちあげてしまったりすることもあるため注意が必要だが、こうした技術的な諸問題は開発元の企業努力や他社との開発競争などによって、近い将来、解決されると見られている。

その暁にはChatGPTのような対話型のAIは「オンデマンド・インテリジェンス(無料あるいはきわめて安い値段で注文できる知性)」になると、OpenAIのCEO(最高経営責任者)サム・アルトマン氏は予想する。

これが具体的に何を意味するかは、かつての「電卓」と対比してみるとわかりやすい。1970年代、世界的に普及した電卓はそれまで紙と鉛筆や算盤、計算尺などに頼っていた面倒な計算から私たち人間を開放し、日常生活や仕事の効率性を大幅に高めた。しかし言うまでもなく電卓にできるのは、あくまで「計算」という1つの機能にすぎない。

これに対し「対話型AI」は人間の各種質問を理解して答えを返すばかりでなく、(前述のように)リクエストに応じてプログラミングをしたり、日本語の手紙を英語に翻訳したり、卒論のテーマを提案したり、新規ビジネスの事業計画書を書いたりと、広範囲の頭脳労働をこなすことができる。

つまり単機能ではなく多機能の人工知能が、ちょうど電卓のようにお手軽なツールとして、無料あるいはきわめて安い値段で手に入る時代がすぐそこまで来ている。そうアルトマン氏は見ているのだ。

アメリカでは学生が不正に利用するケースも

もちろんいいことばかりではない。

アメリカなど一部の国では、すでに高校生や大学生らが「小論文」や「数学」などの宿題をChatGPTにやらせて、それを自分がやったことにして教師に提出するなど、不正に利用するケースが多発している。

実際にアメリカでChatGPTの書いた小論文を読んでみた大学教授が、「うちの学生が書いたものよりいい」とテレビの報道番組で率直に認めていたから、自分で書くよりChatGPTに書かせたほうがいいと考える学生も出てくるだろう。こうした対話型AIは今後、教育制度の根幹を揺るがしかねないという懸念が高まっている。

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