あるとき商業高校の先生が私の著書を読んで、特別授業にお招きくださったことがありました。私は生徒たちを前に、こう断言しました。
「社会的な成功にとらわれ過ぎてはいけない。そんなものは幸せとはまったく関係がない。大事なことは、成功なんかじゃない。幸せになることです」
目指すべきは、成功ではなく幸せ。進学校ではありません。「勉強ができた子たちが成功するのでは」という思いを持っていた生徒も少なくなかったと思います。その意味でも響いたのかもしれません。
後日、先生から生徒たちの感想を送ってもらったのですが、その中にこんな一文を書いてくれていた男子生徒がいました。
「目指すべきは、成功ではなく幸せ。衝撃でした!」
これはうれしかった。有名な大学に行くとか、一流の会社に入るとか、そんなことはどうでもいいのです。自分なりの幸せをつかんでほしい。勉強ができる子は、勉強ができるなりの幸せをつかめばいい。そうでないなら、そうでないなりの幸せをつかめばいいのです。幸せのかたちは人それぞれなのですから。
そして幸せとは、それほど遠くにあるものではないことにも気づきました。お金持ちになるとか、いい家に住むとか、そんなものとはまったく違うところにあります。
私はよく、事業に成功して億万長者になった人たちの話をします。贅沢な人生を何百回でも送れるくらいの資産をすでに持っている。ところが、では彼らはそれで満足して遊んで暮らしているのかというと、まったくそんなことはありません。
実は彼らは、会社の誰よりも働いていたりします。もう働く必要なんてないはずなのに、猛烈に努力をしている。それはなぜか。贅沢に暮らすことや名声を得ることに、幸せはないからです。
その仕事は誰かの役に立っている
では、何が幸せなのか。それは、誰かの役に立てることです。なぜ有名起業家たちは、今なお頑張り続けるのか。それは、より多くの人に役に立つことができるからです。より多くの人を幸せにできる。そしてそれが、自分の幸せにつながるのです。
誰かの役に立てることこそ、最大の幸せなのです。
私自身、振り返ってみて気づいたことがあります。転職した会社が倒産し、職を失い貯金も底を尽きたわけですが、大きな恐怖を感じたのはそこではありませんでした。
仕事を失ったことで、社会との接点がなくなりました。誰からも必要とされず、誰の役にも立てない、誰からもありがとうと言われないことに、恐怖を感じたのです。
フリーランスになって以降、とにかく仕事を引き受け続けたのは、人から必要とされることが純粋にうれしかったからです。誰かの役に立ち、ありがとうと言ってもらえる。これが一番の幸せだったのです。
皆さんもほんの少し「マインド・リセット」すれば、幸せはすぐ近くにあると気づくことができます。なぜなら、どんな仕事もきっと誰かの役に立っているから。
想像してみてください。あなたにありがとうと言ってくれる人は、誰ですか?
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