「老化」物覚えが悪いよりも深刻な"無口"の弊害 50代から始める脳を鍛える「具体的な習慣」

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さらに、実は「脳」というのは、他人とのネットワークから大きな快感を覚え、より活性化するもの。逆にいえば、無口になって人と話さなくなった生活、ブログやFBなども利用せずこれまでの枠を出ない付き合いしかしなくなってしまった生活のなかでは、脳はしょぼくれ、どんどん縮んでいってしまいます。

ネットワークには、脳を、そして心身を活性化させる力があるのです。

「入力系」より「出力系」

「記憶力」には、「モノを覚える力=記憶する(インプット)力」だけでなく、「モノを思い出す力=記憶を引き出す(アウトプット)力」があります。

この「記憶を引き出す力」、脳のどこかにしまわれた記憶を引っ張り出してくる「インデックス(検索)機能」を担っているとされるのが、前頭葉です。この前頭葉が萎縮(老化)してくれば当然その機能も衰え、モノがなかなか思い出せなくなります。

そして何よりこわいのは、この機能が衰え始めると、「悪循環」によってこの機能の衰えにさらに加速がかかってしまうことです。それは「モノが思い出せなくなる」ことにより、「話題も出てこなくなる」からです。

実は、歳をとると、昔は饒舌だった人もだんだんに無口になることがあるのは、前頭葉の老化によってインデックス機能が衰えてくるためです。

こうして無口になり、家に閉じこもり、その家のなかで「アレ」「ソレ」「コレ」だけの会話になっていけば、前頭葉のインデックス機能もますますサビついて老化が進み、ますます人と話すことが億劫になり、さらに前頭葉の老化が進む……そんな悪循環に陥るのです。

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歳をとって「物覚えが悪くなった」ことを秘かに悩む人はいても、「自分が無口になった」ことを悩む人はあまりいないと思います。しかし「老化」という点でより深刻に悩むべきは、物覚えが悪くなったことではなく、無口になったことのほうなのです。

本を読んでも頭に入らなくなった、物覚えが悪くなったというのは、「記憶のインプット=入力系」の衰えですが、実はこれはいくらでもカバーする方法があります。

記憶する行為はかなり意志的な行為ですから、「何がなんでも覚えなければならない」という意欲や気力でカバーできることも意外にあるものです。さらに、歳をとっても「好きなことなら熱中できるし、覚えられる」ということもままあるものです。

一方、「記憶のアウトプット=出力系」では、前頭葉の他に頼れるものはありません。

そこで入力系よりまず、「脳の出力系」を鍛えること。「鍛える」といってもハードなトレーニングは必要ありません。日頃の習慣を見つめ直してみたりあらためてみたり、ものの見方を変えてみたり――それだけでも老化のスピードは緩まるはずです。

和田 秀樹 精神科医

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わだ ひでき / Hideki Wada

1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェロー、浴風会病院精神科医師を経て、現在は和田秀樹こころと体のクリニック院長。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わる。『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『80歳の壁』(幻冬舎新書)、『60歳からはやりたい放題』(扶桑社新書)、『老いたら好きに生きる』(毎日新聞出版)など著書多数。

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