大塚家具の委任状争奪戦、金融3社の悩み 会長か社長か・・・難しい選択に

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鍵を握るのは、残りの日本生命と東京海上日動、三井住友銀行の動向だ。複数の関係者によると、3社とも10年以上前から同社株を保有。三井住友銀と東京海上日動は政策目的、日本生命は投資目的だ。

通常、日本の金融機関は、投資先企業で議決権をめぐる争いが発生した場合、会社側に付くケースがほとんどだ。

特に政策株の場合は「現経営陣に対する信任を前提に株式を購入している」(大手行幹部)ためだ。実際、会社側に対抗して株主提案をするのは、短期の投資回収を目指して増配や自社株買などの株式還元策を求めるファンドが多い。「中長期的な企業価値の向上を目指す」(同)ことを旗印としてきた国内金融機関としては、自ずと会社側提案に傾きがちだった。

ただ、今回の大塚家具のケースでは、対立する会長と社長がそれぞれ取締役メンバーだ。会長である父親は創業者で、直近まで社長を務めてもいた。ある金融機関幹部は「会長、社長側ともそれぞれの理屈があり、どちらに付くとは言いにくい」とこぼす。

金融機関の中には「議決権行使の棄権」も選択肢に上がったもようだが、それを覆す原動力になっているのが日本版スチュワードシップコードの導入だ。

機関投資家としての受託者責任を求めている同コードは「すべての保有株式について、議決権を行使するよう努めるべき」と定めている。

金融庁のある幹部は「どちらの提案が正しいという正解はない。受託者責任を果たすために、真剣に考えぬくことが重要だ」と話している。

金融機関は難しい選択を迫られそうだ。

 

(布施太郎 編集:田巻一彦)

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