ロードスター「7年目で過去イチ」売れている理由 市場の追い風+改良タイミングで年1万台達成

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このKPCのメリットを生かし、軽量ゆえの軽快さと乗り心地を魅力としたのが、990Sである。そして、それが話題となり、ロードスター全体への注目度を高めることになっていたのだ。

KPCの作動イメージ(写真:マツダ)

ちなみに2021年10月から2022年9月に販売された約1万台のロードスター(RFを含む)の内訳として、もっとも割合の大きかったのが990Sで、その数字は25.5%にもなっている。

また、990Sを見にきた結果、装備などから他グレードを購入する人も少なくないと聞く。それだけ990Sの人気は高く、代替えや新規ユーザーの呼び水となっているのだ。

このKPCの採用および990Sの誕生は、2019年からロードスターの主査(開発責任者)となった齋藤茂樹氏の存在が大きい。どういうことかと言えば、“改良内容は主査次第”という部分もあるからだ。

デザイン→メカニズムへ

齋藤氏の前任は、現行ロードスターのデザインを手がけた、中山雅氏である。デザイナーが主査を務めていたのだ。

そのため、中山氏の主査の時代には、クラシックレッドのボディカラーの復活や30周年記念車など、主にデザイン面の改良や提案が多かった。デビュー直後は性能面に手を加える必要がないから、そうしたデザイン主体の改良や提案が多いのも納得できる。

初代(NA)と同じボディカラーとした限定車「クラシックレッド」(写真:マツダ)

実験・開発出身の齋藤氏がバトンを受け取ったのは、デビューから4年を過ぎた2019年だ。4年も経てば、他社から新型車や新技術が出ているものだし、商品としての鮮度も落ちてくる。そこで、走りにまで改良の手が及ぶことになったのだ。

その結果が、2021年暮れのKPC導入と990S発売となった。モデルライフの初期はデザインで楽しませ、後期になってメカニズム面を大きく進化させてきたというのが、現行ロードスターの歩みであったのだ。

スポーツカーへの注目度アップという追い風を、大幅改良という努力によってつかんだ。それが、現在のロードスター絶好調の理由なのである。幸い、まだ次期型(NE型?)ロードスター登場の足音は聞こえてこない。まだまだ、NDロードスターの好調は続くであろう。

ちなみに、マツダ全体でいえば2022年6月以降、前年比約120~150%で推移しており販売は絶好調だ。ただし、これは「CX-60」などの新型車効果ではなく、“生産の都合”という側面が強い。

「CX-60」は2022年9月に発売された(写真:マツダ)

なぜなら、3~5月は前年比約50~80%という低い数字であったからだ。中国のコロナ禍によるロックダウンの影響などにより、部品調達に問題がり、生産が滞っていたためである。

つまり、夏の好成績は“春の不調を取り戻している”と見るのが正しいだろう。10月末時点でのマツダの年間販売台数は、前年比104.9%と微増にとどまっている。ただし、これからは新型モデルであるCX-60の上積み分が期待できる。どれほど販売成績を伸ばせるのかに注目したい。

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鈴木 ケンイチ モータージャーナリスト 

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すずき けんいち / Kenichi Suzuki

1966年生まれ。茨城県出身。國學院大学経済学部卒業後、雑誌編集者を経て独立。レース経験あり。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

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