静岡リニア「川勝知事」JR東海にまたも無理難題 権限及ばない山梨県のトンネル工事中止を要請
静岡県の掘削ストップ要求に強く反応したのは、山梨県の長崎幸太郎知事だった。長崎知事は「山梨県の話をするのに、ひと言もないのは遺憾だ」と怒りをあらわにした。
川勝知事が10月26日の関東地方知事会議で長崎知事に直接、“あいさつ”したことで、長崎知事も一定の理解を示したが、山梨県内の工事ストップを了解したわけではない。この問題の根は深い。
今回の問題は、今年4月25日、川勝知事が「これまでの全量戻しに関わることから、リニア問題は新たなステージに入った」と発言したことから始まった。当時の「新たなステージ」とは、南アルプスルートの路線計画決定と地質調査の問題だった。
「地質脆弱などで高圧湧水の恐れ」があった山梨県内のルートを回避して、現在の南アルプスルートに決定したことを問題視して、「静岡工区の全区間で切羽崩壊と大量湧水の発生懸念」があるから、JR東海は南アルプスルートを回避すべきだったと主張した。現在の南アルプスルートへ強い疑念を投げ掛け、ルート変更の議論にまで持ち込みたい川勝知事の意向が見え隠れしていた。
川勝知事は今後、ルート計画決定を問題視していくと強気の姿勢を見せていたが、静岡県のリニア問題責任者、難波喬司副知事(当時)は「(2011年5月の国交省の)整備計画決定時のことであり、専門部会で問題視しない」と蹴ってしまった。
工区の名称に言いがかり
難波氏の対応を見て、川勝知事は別の「新たなステージ」を持ち出した。
「山梨工区、長野工区が静岡県内に入っていることは失礼であり、無礼であり、私も長崎知事も知らなかった」などの発言を行い、「リニアトンネルは静岡県内10.7kmを通過するのに、静岡工区が8.9kmであり、約1kmずつ山梨工区、長野工区が静岡県内での工事となるのは納得できない、静岡県内すべてを静岡工区とすべき」という主張に切り替えた。
川勝知事の新たな主張を基に、事務方が「山梨県内の工事をどこでストップさせるのか」という“無理難題”をひねくり出して、JR東海へ送りつけたのだ。
実際には、静岡県内の断層帯などを踏まえ、山梨工区、長野工区から上り勾配で工事をするため、静岡県内のそれぞれ約1kmを工事区間とした。
いずれの工事も静岡県境でストップするから、「失礼でも無礼でもない」のだが、「ルート計画決定」問題で大騒ぎするつもりだったのに、当てが外れた川勝知事は、今回の山梨工区の工事ストップで新たな大騒ぎのタネをまきたかったのだ。
国交省は2020年4月から有識者会議を立ち上げて、約2年間の議論で「大井川下流域の水環境への影響はほぼなし」とする結論をまとめた。
ところが、国交省は「全量戻し」を求める川勝知事の口車に乗ってしまい、工事中の10カ月間に山梨県外へ流出する最大約500万立方メートルを戻す方策は解決していないと中間報告に記した。
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