日本人はいつから「風呂」好き?知られざる歴史 江戸時代以前は湯につかる入浴はまれだった?

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実はお湯につかって入浴するのは、明治・大正時代になってからだという。それ以前は、主にお湯の湯気を使って入浴していた。つまり「蒸し風呂」だ。湯気が逃げないように、出入り口を小さくするなどの工夫をしていたが、衛生上の問題や暗かったことから風紀上の問題もあったという。

とはいえ、江戸時代以前でも、一部の武家や豪農の屋敷では、湯に首までつかる「据(すえ)風呂」があった。関東では「鉄砲風呂」、関西では「五右衛門風呂」と呼ばれる、鉄の部分で火をたいてお湯を沸かす一人用の桶の風呂だ。

明治時代からガスがお湯の熱源になる!

1877(明治10)年頃になると、今の銭湯の原型になる「改良風呂」と呼ばれる風呂ができる。浴槽を板間に沈め、たっぷりのお湯につかって入浴するという、今と同じスタイルに変わったのだ。流し場の天井が高くなり、湯気抜き窓が付くなど、開放的な銭湯になって、衛生面や風紀面も改善されていく。さらに、大正時代には、板張りからタイル張りになるなどの変化も見せた。

一方、煮炊きについては、1900(明治33)年頃から、薪や炭に代わって、ガスが使われるようになる。江戸時代のへっつい(しっくいで固めた壁土のかまど)から薪かまどに変わり、1902(明治35)年に東京ガスから初の国産ガス機器「ガスかまど」が開発された。

左(イラスト:大橋慶子)、右(出所)東京ガスネットワーク ガスミュージアム「ガスかまど」

東京ガスは当時、渋沢栄一が取締役会長を務めていた会社だが、ガスの熱源利用が主流になると見て、一般家庭への炊事用ガスの普及拡大を決めたとのこと。ガスが熱源になることで、薪による煮炊きの重労働からようやく庶民は解放されたのだ。

さらに東京ガスは、1910(明治43)年に、木製浴槽に風呂釜を内蔵し、ガスバーナーを配した「角型瓦斯風呂」、「桶型瓦斯風呂」を発売する。こうして、お湯はガスを熱源として利用されるようになっていく。

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