昨今、サイエンスフィクション、略してSFと呼ばれるジャンルがビジネス界から注目されている。未来予測的な要素に加え、SF特有の思考法への期待が高まっているのだ。
SF作品は、極端な状況を設定することによって、ジェンダー問題や環境問題などに関する人々の無意識・先入観を炙(あぶ)り出してきた。そうした「問題発見力」「価値観の転換・飛躍」などを、「SF思考」と呼ぶ。SF思考のビジネス活用という動きに呼応するように、今、国内外のSF作家たちが従来の枠を超えて活躍し始めている。
著者は、SFを取り巻く状況が変化する中で注目を集める作家の一人。福島県郡山市出身の彼は、東日本大震災を体験し、生物学者の夢を諦めて兼業作家から専業作家となった。SFの特性の1つである「科学的思考に基づく世界像の転換」を得意とする。
独自の視点から見える世界
2015年のデビュー作『横浜駅SF』では、横浜駅が著者の誕生時からずっと工事中であるという事実をモチーフにした。描いたのは、自律的に増殖した「横浜駅」が日本全土を覆い、自動改札やICカードといった身近な道具が奇想天外な発展を遂げた先の管理社会だ。その後の『まず牛を球とします。』などでも、分析的な視点と奇想天外な発想を結びつけている。
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