台湾が「双十国慶節」で明確にした国土防衛の意味 台湾国会議長が「台湾有事は日本有事」と言及
游氏は1948年、貧しい農家の長男として生まれた。災害による不作と一家の大黒柱である父親の死去で、家計を助けるために仕事を手伝い、入学したばかりの中学校に通えない時期が5年も続いたという。その後、働きながら夜間学校などに通い、まだ戒厳令下の、民主化されていない台湾政界に身を投じるようになる。
民主進歩党(民進党)の結党メンバーで、謝長廷・駐日代表や蘇貞昌・行政院長(首相)と並び、同党の「四天王」と呼ばれている。しかし両氏が弁護士出身であるのに対し、游氏は農家からサラリーマンに転じた人物。派手さには欠けるが、一歩一歩堅実なイメージから、いつの頃からか「水牛伯」という別名が社会で浸透するようになる。
水牛に例えられるほど温厚そうなイメージとは違い、国際政治における游氏は、時に台湾独立の先鋒のような存在に映ることもあるのだ。
国土防衛は責務をアピール
游氏は民進党の古参議員ということもあり、民進党の本来の目指すべき方向性と自身の考え方が重複する部分が多い。すなわち、台湾独立(建国)に賛成の立場で、各国と国交を結ぶことを目指している。また、国会は一定の外交権を有すべきで、議員外交にも積極的だ。
実際に2022年7月17~29日、游氏と与野党議員らがリトアニア、チェコ、フランスの3カ国を訪問した。コロナ禍で、台湾とリトアニアやチェコの急接近が話題になったが、游氏が推進する議員外交がもたらした成果とも考えることができる。
2022年8月2日にアメリカのペロシ下院議長が訪台したときには、新型コロナウイルス感染症の陽性反応が出てしまい、ペロシ氏との対面接触はなかった。しかしオンラインで、ホストとして直接訪台を歓迎する様子がメディアなどで報じられた。議員外交でたびたび登場する游氏は、アメリカを始めとする西側諸国の議員間で存在感が高まっている。ちなみに、中国は游氏を台湾独立分子としてブラックリストに入れている。中国から見てもたいへんやっかいな存在だということの証だろう。
游氏は今回の式典での演説で「国土防衛は人々の責務」「民主の深化と成果を世界と共有」をテーマに掲げた。
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