人間関係で「失敗する人」「うまくいく人」の決定差 自他の「境界線」を持てないまま成長した結果…

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境界線は、「相手があなたにどう接してほしいか」を他者に示す手がかりにもなります。たとえば「私たちの間だけで共有したいものについて話しますね」と言うように、はっきりと主張する意味があります。あるいは、玄関のすぐ脇に来客用の室内履きと靴下を入れたバスケットを置いておくような、暗黙の要求を示す意味もあります。また、あなたが自分のために限度を設けるのと同じく、他人もそれぞれに自分が持つ境界線をあなたに伝えようとしているのを忘れてはいけません。

家族のあり方や個性は、境界線をどう設定するか、どう受け入れるかを決定づける要素です。もしも、互いの承諾なく線引きをしたり、その線を無視したりするような家庭ならば、自身の要求を主張するために必要なコミュニケーション能力を培えないまま、成長してしまうでしょう。

たとえば、アルコール依存症を患う親に育てられた子どもには、境界線を設けるのに苦労する時期があるかもしれません。あるいは他の依存症を持つ親が、子どもの境界線よりも自分の中毒の方が重大なのだとメッセージを送ってくる例もよくあります。こうした親に育てられた子どもは、境界線の理解や、線引きが難しいまま成長しがちです。家族が、持つべき境界線をきちんと伝え、尊重する家庭であれば、どんな状況でも上手に線引きができるようになるでしょう。

「もろい境界線」とは?

個々それぞれの性格によって、境界線を尊重したり拒絶したりするときの受け入れ方は異なります。不安に陥りやすい人は、境界線を引かれることに過剰反応しがちです。こうした人々は、自分の置かれた状況に対してふさわしい反応ができないため、感情のコントロールが大きな課題となります。

また、いつでも正しくあろうとし、些末な違いに食ってかかったり、他者との違いをなかなか認められなかったりと、不快なものに強い拒否感を示す人は、境界線に反発しやすいと言えます。一方、寛容(変化を受け入れやすい)で高い意識(学び成長する意思がある)を持つ人は、境界線を尊重できます。

境界線は、年齢に関係なく、必要不可欠なものです。一定の関係で結ばれた人同士が変わるように、人間関係を変化させてくれます。結婚したり、大学進学のために家を出たり、家庭を築いたりするたびに新たに設定し直す必要がある、移り変わりを伴うものでもあります。

次に紹介するのは、実質的に3つのレベルに分けられる境界線の例です。あなたに近いものがあるかどうか、見てみてください。

次ページ3つのレベルに分けられる境界線の例
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