中国の歴史的干ばつが招く電力危機の深刻度 長江の水位低下で主要水力発電所の能力に制限
中国湖北省の省都、武漢市に住む62歳の万勁軍さんはここ10年間、長江(揚子江)での水泳が日課だが、今のような低い水位は経験したことがない。「水位が下がり続けている」と言う。
中国を襲った熱波により、国内屈指の穀倉地帯や、世界最大の水力発電所である三峡ダムなど多くの大型ダムの水源である長江の水位は低下。万さんがいつも泳ぐ場所は1年前、堤防の高さほどの水位だったが、今は一部で川底が露出し、この時期としては1865年の統計開始後で最も低い水位となっている。
長江の水位低下で主要な水力発電所の発電能力が制限され、多くの地域で電力が不足している。上海など大都市では一部の電灯が消され、エスカレーターも停止されたほか、エアコンの利用を控えるよう求められている。米テスラは上海工場に関係するサプライチェーンの混乱を警告し、四川省ではトヨタ自動車が工場の操業を一時停止した。
上海市の象徴、摩天楼のライトアップ停止-四川省の電力不足の余波
現在の電力状況は、石炭不足で全国的に節電を強いられた2021年ほど厳しくはないものの、新型コロナウイルス関連のロックダウン(都市封鎖)と不動産危機で打撃を受けた国内経済の立て直しに取り組む当局は一段と難しい問題を抱えることになる。中国共産党は5年に1度の党大会開催を年内に予定しており、異例の3期目を目指すとされる習近平総書記(国家主席)は難題を突き付けられた格好だ。
電力供給を水力発電に大きく依存している四川省は、1960年代以来最悪の干ばつに見舞われ、特に大きな打撃を被っている。猛暑により同地域の電力需要が約25%増加する一方で、水力発電量は半減した。
ブルームバーグNEF(BNEF)によると、中国の総発電量は2020年時点で水力発電が約18%を占め、国内最大のクリーンエネルギー源だ。