茨城・水海道第一、1673人から選ばれた「電通マン」校長は、学校をどう変える? 「クリエーティブ×教育」から見える学びの未来

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こうしたさまざまな状況が福田さんを教育事業へと向かわせることになった。福田さんは出向や任期などの条件などを鑑み、茨城県の民間校長公募に応募。結果、約1700人の応募者の中から選ばれた3人(4人合格で1人は辞退)のうちの1人となった。

「今の学校は勉強と部活で生徒の時間は100%埋まっており、決められたものをこなすだけという時間の使い方をしています。それでは不健全だと私は考えました。もっと生徒自身に主体的な学びが必要なのではないか。その主体的な学びの部分を私はクリエーティブにしたいと訴えたのです。それが選ばれた理由かもしれません」

「面白い!」から、学びが始まる

今年4月から茨城県立水海道第一高校・附属中学校の副校長となった福田さん。現在はどのような仕事をしているのだろうか。

「本来なら校長見習いという立場で、いわゆる管理職がやる仕事を覚えることがメインとなります。しかし、それではつまらない。そこで自分で学びのプロジェクトを立ち上げて、課外授業という形でイベントを開催し、生徒たちからフィードバックをもらいながら、また企画立案するというイベントプロデューサーのような仕事をしています」

今年5月に開催された、プロのCM監督を招いての「Premiere Pro」を使った編集教室。作成した動画は、文化祭である「亀陵祭」で上映された
電通からクリエーターを招いて「面白い」についての「面白い授業」を開催した。授業終了後に取ったアンケートでは、生徒満足度は94.4%だったという

生活スタイルもがらりと変わった。都内から単身赴任して茨城県内に住み、早朝に起きて、帰宅後は勉強し、早めに就寝するというクリエーティブ・ディレクター時代とは真逆の生活を送っている。

「なじむには時間がかかるだろう、職場でも敵対する人がいるかもしれない、と不安もあったのですが、いらぬ心配でした。早い段階でやりたいことを表明し、ほかの先生とは職域も違い、期限付きの出向であることがわかっているので、いわば、改革の破壊者ではないと周囲には認識されたようです。当初は畑違いの奇妙なものを見るような感じでしたが(笑)、今は先生や生徒だけでなく、保護者の方からも学校説明会などを通して、広告畑の珍しい人がいると興味関心を持ってもらっている状況です」

福田さんが教育の現場に入って半年近くが経った。当初描いたイメージと、実際の現場ではどのような違いがあったのだろうか。

「実際の現場を見てみると、もう少し生徒にゆとりを与えて、自分で考える時間を増やしたほうがいいのではないか、そう思っています。先生たちも生徒に何か課題を与えないと勉強しないのでは、と考えている節があり、私が高校生だった時代と比べて、課題もテストも多すぎるように見えます」

しかし、それは先生たちのせいばかりではないとも福田さんは言う。先生自身も発想を自由に持つことができないほど、学校の行事などがシステマチックに出来上がっているので、そのシステムによって先生自身が自分で自らを追い込んでいるように感じられるという。

そうした状況を目の当たりにした福田さんは、少しずつだが課外イベントを手始めに、生徒たちや先生にも自由でクリエーティブな学びという新たな視点を提供しようと努めている。その基本は、これまで感じたことのない刺激を与えること。実際のイベントでは電通の出向元である部署が協力体制にあるほか、現役の東大生や面白い経歴を持った社会人とのトークライブなどを実施している。水海道一高では今年から附属中を開設したが、高校生だけでなく、中学生たちも福田さんのイベントに熱心に参加しているという。

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