いつまで続く?英国「30年ぶり」の大規模鉄道スト 激しい物価上昇で全国鉄道労働者が賃上げ要求
ストが実施されるにあたり、鉄道運行各社は利用客に「スト実施日は“必要不可欠な移動“のみを行うように」と促した。その告知はまるでコロナ禍のさなかに「Work from Home(いわゆるテレワーク)」をすべきと政府が求めた頃のフレーズに似ている。
運輸労組は複数回にわたる大規模ストを打っているが、果たしてその効果は出ているのだろうか。
皮肉なことに、社会環境は1989年のときとは大きく変わっている。イギリスではコロナ禍の後、多くの企業が積極的に出勤を求めず、通勤回数は減らしていいという方向性を示しており、定期券を購入して毎朝毎夕通勤する人々は大幅に減った。つまり、ストの日は通勤予定を外せばいい、という行動様式になっているのだ。
最終的に今回のストに対する「結果」が出るのはまだこの先となるが、すでに鉄道労組に協調する動きも出ている。ナショナル・レールの多くの列車運行会社が8月13、18、20日の3日間にスト実施を予定。これに加えて、ロンドンでは「赤い二階建てバス」運転手労組の組合員1600人以上が8月19日と20日にストを実施する構えを見せている。
ロンドンの公共交通機関は財政破綻寸前の状態に瀕しており、バス路線の大幅な改編も公表された。「賃上げも要求したいが、人員整理も許しがたい」として、鉄道ストと同日に決行する見込みだ。
人手不足も拍車をかける
テレワークの普及で、通勤客は「職場に行かない」形でその日を乗り切ろうとしているが、市民らの懸念はまだ消えていない。ほかの公共サービス職員がストに踏み切る可能性があるからだ。1989年には鉄道だけでなく救急隊員によるストもあり、こちらのほうが人々の記憶に残っているという。そんな背景があるからこそ、大規模化に懸念を示す論調が多いのかもしれない。
この夏、イギリスのみならず欧州各国では、運輸業を含むサービス業全体で人手不足が顕著だ。鉄道では運転士や車掌が足りないとして、突然列車が運休になるケースも続発している。駅では「コロナ感染で乗務員が休んでいるため」などと説明を受けるが、実は労組が自主的に予告外の非公式ストを打っているとの疑念も出ている。人手不足による影響は年末まで続くとの予測もあり、スト以外の理由での混乱も避けられない。
また、人手不足に起因して労働環境の改善を求めるストの激化も予想される。労使間の妥結には時間がかかりそうだ。一方では、「もう労使関係の揉め事は嫌だ」とばかり、ロンドン地下鉄への無人運転車両導入も取り沙汰され始めた。はたしてどんな格好で混乱が収まることになるのだろうか。
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