過度の不安が薄らいだアメリカ市場の「次の懸念」 当面、株価はそれなりに戻るかもしれない
市況にやりすぎの修正運動が生じているのは、アメリカの株式市場だけではない。ドル円相場は一時1ドル=140円に迫ったが、先週末は一時132円台に落ち込み、133円台前半で引けている。先々週は日本銀行が金融政策をまったく変えなかった一方、ECB(欧州中央銀行)が先々週、アメリカ連銀が前述のように先週、利上げを行ったにもかかわらずだ。
以前であれば、内外の金融政策の差を材料に、大きく円安が進みそうなところだった。だが円高に振れ戻ってきた背景としては、円安思惑がやりすぎであったため、その修正が生じた、と解釈している。
また、アメリカの10年国債利回りも6月半ばには3.5%に迫る上昇を示したが、連銀が短期金利を押し上げているにもかかわらず、先週は2.6%台まで下押ししている。原油や銅などの国際商品先物市況も頭が重い。これも、インフレ懸念、金利上昇懸念をはやして行きすぎた市況が、正常化を進めてきたと考える。
またまた「行きすぎた楽観」になる懸念も
円相場やアメリカ長期金利、国際商品市況などは、やりすぎとその揺り戻しを経て、今後はしばらく落ち着いた上下動を示すと予想している。ただし主要国の株価については、余りにも悲観が行きすぎていたため、今後の「正常化」としての株価の戻りはまだ続くだろうし、幅はそれなりに大きくなると見込む。
加えて、通常、下に行きすぎた株価は上にも行きすぎるので、今年末あたりには日米など主要国の株式市場は、行きすぎた楽観に包まれるおそれがあると懸念している。
読者の方の中には、「株価が年末に向かって大きく上がるという、明るい見通しについて、なぜ『おそれ』や『懸念』という言葉を使うのか」と疑問に感じる方もおられるかもしれない。ただ、行きすぎた株価上昇が行きすぎたまま上昇し続けるということは大概起こらず、来年にその反動で主要国の株価が大きく下振れする局面を迎えざるをえないという観点から、懸念を表明したわけだ。
経済実態に関しても、アメリカでは、今後も続く利上げの景気抑制効果が出るのはこれからだ。すなわち、今年ではなく、むしろ来年の景気や企業収益が危ういといえよう。
また当コラムでは、2つのペントアップデマンド(抑制された需要)の反動増を、アメリカの個人消費や世界の設備投資について指摘してきたが、今年内にそうした需要増が世界景気を押し上げれば、来年はその反動減が生じうる。短期的にも中長期的にも株価の波乱(上にも下にも)が続く中、投資家には動じない姿勢が求められるだろう。
(当記事は会社四季報オンラインにも掲載しています)
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