過度の不安が薄らいだアメリカ市場の「次の懸念」 当面、株価はそれなりに戻るかもしれない
金融政策では、アメリカではFOMC(連邦公開市場委員会)が7月26~27日に開催され、0.75%幅と大幅な利上げが決定された。その後のジェローム・パウエル連銀議長の記者会見は、9月以降の利上げについて、同様に大幅な利上げが継続される可能性も利上げ幅が小さくなる可能性も示唆する内容だったが、市場は「利上げ幅縮小の可能性が語られた」と株高に都合がよい面を取り上げ、FOMC後の株価は上昇した。
「いいとこどり」よりも「過度の悲観の修正」
一方、マクロ経済統計では、7月28日に発表された同国の4~6月期の実質経済成長率が、前期比ベースでマイナス(年率換算後でマイナス0.9%)となり、1~3月期(同マイナス1.6%)に続いてのマイナス成長となった。実質GDP前期比が2期連続マイナスだと、リセッション(景気後退)の「目安」とされる。
「目安」と述べたのは、実際にリセッションなのかどうかは、全米経済研究所(NBER、National Bureau of Economic Research)が総合的に判断するからだ(判定が下されるのは数カ月後)。
実は、2期連続で実質GDPの前期比がマイナスとなったのにリセッションと判定されなかったことは、1947年にあった。逆に、2期連続で実質GDPが前期比マイナスにならなかったのにリセッションと判定されたことも、1960年と2001年の2回ある。
ただ、それ以外は2期連続のマイナスとリセッションだとの判定が重なっているので、11月の中間選挙前に判定がなされるかどうか、選挙前のリセッション宣言なら政治的な影響はどうかなどが、注視されよう。
やや話が市場の反応からそれたが、この28日のGDP統計の発表を受けて、同国の株式市場では景気後退懸念が勝って、株価指数が前日比で下落したのは寄り付き後しばらくの時間にとどまった。引けにかけては「景気が冴えないなら、今後の利上げは抑制されるだろう」との思惑からか、上昇している。
こうした先週の材料と株価の動きを、短い時間軸だけを切り取って眺めると、市場は「いいとこ取り」をしており、楽観的すぎるように感じられるかもしれない。しかし、冒頭でつらつら述べたように、少し前までの株式市場が過度の悲観に包まれていたという少し長い時間軸で見ていくと、先週の動きは「過度の悲観の修正」、つまり過度の悲観から普通の状態へと修正運動が始まったところだ、と解釈するほうがすっきりする。
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