アリババの創業者マー氏中国政府に大きな譲歩 グループのフィンテック企業の経営権手放す方針

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電子商取引で中国最大手アリババグループの創業者、馬雲(ジャック・マー)氏は2年近く公の場にほとんど姿を見せなかったが、数週間にわたり欧州各地を訪れている。自ら築いた企業帝国から距離を置こうとする馬氏に対し中国政府の圧力が和らいでいる兆しが増えている。

馬氏(57)はオーストリアのレストランで目撃され、持続可能な農業について学ぼうとオランダの大学を視察、スペインのマヨルカ島沖に所有するヨットを停泊させた。ブルームバーグや現地メディアが伝えている。

アリババのフィンテック企業アント・グループに対する規制を巡り馬氏が中国共産党の当局者を2020年に批判してから、同氏が外国旅行をするのはこれが初めてではないが、中国政府が以前、出国しないよう馬氏に求めていたことからすれば、大きな変化だ。

投資家の警戒心は強く、アリババが本社を構える浙江省杭州市当局が「馬氏」に刑事上の強制措置を科したと国営中央テレビ(CCTV)が報じると、今年5月上旬にアリババ株は急落し一時的に時価総額260億ドル(約3兆5000億円)が吹き飛んだ。馬雲氏が拘束されたとの臆測が広がったためだが、その後、報じられた対象は別人であることが判明した。

ジャック・マー氏の影響力恐れた中国共産党

オンラインイベントで語るジャック・マー氏(2021年)Photographer: Justin Chin/Bloomberg

政府の厳しい監視から逃れるため、馬氏は大きな譲歩をしなければならなかった。アントは20年11月に超大型の新規株式公開(IPO)を計画していたが、上場直前で当局が待ったをかけた。

アントは厳格化された規制に対応するため事業を抜本的に見直し、どのように業務を「是正」する方法について中国人民銀行(中央銀行)と定期的に話し合ってきた。アントが成功を収めたデジタル決済やマネー・マーケット・ファンド(MMF)は大手国有銀行の優位性を脅かしていた。

口頭で示唆

事情に詳しい関係者によれば、馬氏はアントの経営権を手放す意向だと同社側が当局に口頭で示唆している。ただ、アントはこうした計画を当局および人民銀に1年余り前から伝えている。検討案の1つは、アントが委員会を通じて監督できる形で馬氏の持ち株を他の幹部に移すことだという。

    アリババは今週の届け出資料で、馬氏は「時間の経過とともにアントに対する自身の直接的および間接的な経済的利益を減らし制限する意向だ」とあらためて示し、同氏のアント議決権が8.8%を超えないようにすると説明。馬氏は現在、議決権50.52%を保持している。

ユナイテッド・ファースト・パートナーズのアジア調査責任者ジャスティン・タン氏は「アントの首元から重要なキーマンのリスクが取り除かれるだろう」と述べた。

アントとアリババ、馬氏の財団の担当者はすぐにはコメント要請に応じなかった。人民銀はファクスでのコメントの求めに返信しなかった。

米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は先に、馬氏が経営権を手放し、議決権の一部を他のアント最高幹部に移す可能性があると同社が当局に伝えたと報じていた。

29日の香港株式市場で、アリババの株価は一時6%を超える下げとなった。

原題:Jack Ma Escapes Beijing’s Crosshairs by Giving Up His Power(抜粋)

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著者:Lulu Chen、Abhishek Vishnoi

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