中国からの「黒船EV」が日本で乗り越えるべき壁 300万円台でSUVを投入、販売拠点も100カ所展開

拡大
縮小

発表会で車両価格は明かされなかったものの、中国では約300万円で販売されている。従来のガソリン車と変わらない値段で、EVとしては安価だろう。

BYDが日本で発売を予定する3車種(撮影:尾形文繁)

中国・深圳発のBYDは1995年に電池メーカーとして創業し、スマホ向け電子部品などを製造している。自動車事業は2003年からスタートさせ、2009年にはEVの量産を開始した。

2022年1~6月においては世界で64万1350台を販売してきた。NEV(新エネルギー車)において販売台数は世界首位。台数規模でいうと、同時期に世界販売約55万台だった国内メーカーのマツダに近い。

一気通貫の車両開発体制が強みに

BYDの強みは、自社でバッテリーの開発から車両への搭載まで一気通貫で車両開発できることだ。また、BYD本社はトヨタと合弁会社を設立してEVの共同開発を進めるなど、日本の自動車メーカーとも関わりがある。

ヨーロッパや中国の自動車メーカーは近年、グローバルでEV販売を加速させている。日本のEV市場への参入も始まっているが、ヨーロッパ勢のEVの価格帯は700万円以上と、高価格帯が中心だ。例えば、メルセデス・ベンツ日本が7月に発売したEV第3弾の「EQB」は788万円からだ。

この高価格がネックとなっているため、EVを選ぶ人はまだ少なく、日本国内の乗用車販売台数のうちEVは1%に過ぎない。日系メーカーでも今年販売開始したEVの日産自動車の「日産アリア」やSUBARUの「ソルテラ」の場合、600万円前後するため安い買い物ではない。

これに対し、BYDの「ATTO 3」の価格は衝撃的だ。「なるべくユーザーに手の届きやすい価格の設定を想定する」(劉社長)という方針で、規格に合った日本仕様に開発も必要だが、中国国内での同車の販売価格を考えると、300万~400万円台での販売になりそうだ。

次ページ知名度とブランド力が課題に
関連記事
トピックボードAD
自動車最前線の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT