英語「小学校でどう学んだか」で能力差、中学で「苦手」避ける授業づくりのコツ 小・中連携で段階的にレベルアップしている

中学校の英語教育は「難化」しているわけではない
――2021年度に中学校の英語教育の学習指導要領が改訂されました。これまでは高等学校で習っていた現在完了進行形、仮定法などの文法も中学校での教育内容になり、学習する英単語も1200語から1600〜1800語に増えるなど、学習内容が増加しています。
佐藤 英語教育は、小中一貫で推進していくことが大切であると考えられていますが、その目標は、小学校も中学校も同じ。「英語を聞くこと、読むこと、話すこと、書くことの言語活動を通じ、コミュニケーションを図る資質や能力を育成する」ということです。

(写真:佐藤氏提供)
中学校英語の学習指導要領改訂に先駆け、まずは20年度より、小学校英語の学習指導要領が改訂されました。小学校3・4年生から英語教育が必修化され、3・4年生は年間35時間(週1コマ)、5・6年生は70時間(週2コマ)、英語の授業が行われるようになりました。
中学校の英語教育において、学習指導要領の改訂により文法の学習内容の前倒しや、学ぶべき英単語の数が増え、「英語教育が難化している」という声が聞かれます。
しかし、小学校英語の学習指導要領改訂により、「小学校時代に英語の授業をトータル210時間受けたうえで中学校に進級する」、すなわち「小学校で十分な下地をつくったうえで中学校に進む」ということになります。
また、ある教科書会社の中1英語の教科書を見ると、基本文の約7割は小学校で習った表現になっています。ほかの会社の教科書も同様のことが考えられ、「中学校に行ったら英語が急に難しくなった」と感じる生徒は少ないでしょう。「中学校で難化する」というよりも、「英語教育は、小・中連携で段階的にレベルアップしている」という表現が当てはまると思います。
聞く、読む、話す、書くという4つの技能のうち、「話す」技能がとても大切です。「話す」技能を育むために、小学校では「(英語で)やり取りをする」「(英語で)発表する」学習を行いますが、中学校でも同様に「話す」が2領域で学習されます。また、「即興性」も求められ、語彙力をさらに向上させて、英語で考えや気持ちを伝え合うことが期待されています。
――中学校入学時点で、「英検2級の生徒もいればこれから5級を受ける生徒もいる」など、生徒間に能力差がある現状がありますが、背景として考えられるのはどのようなことでしょうか。
佐藤 研修などを熱心に行い英語教育に力を入れる小学校で学んだ児童は、英語で話すことに抵抗感がなく、またタブレット学習を積極的に行う小学校で学んだ児童は、調べ学習などを通して主体的に英語学習に取り組み、「みんなに英語で伝えてみたい」という気持ちが起こりやすくなりますが、そうでない学校の場合は、話すことに抵抗感があり思うような成長が見られないケースもあります。
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