中学3年間で「英語話せる子」育てたい先生の本気 都立両国からドルトンへ「コミュ中心」授業の今

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従来の詰め込み型教育から距離を置き、学習者中心の教育を掲げるドルトン東京学園。2019年度の開校から今年で3年目。心理学・哲学・教育学の学問的理論を取り入れた独自の教育メソッド「ドルトンプラン」の下、実際の授業はどのように行われているのか。今回は都立両国高等学校から2020年4月に同中等部の教頭・英語科主任に就任した布村奈緒子先生の授業をのぞいた。

生徒約20人に対して先生は3人、社会科のような英語の授業

小田急線成城学園前駅からタクシーに乗り込み、「ドルトン東京学園までお願いします」と告げると、運転手は一瞬考えるような表情をして、思いついたようにこう言った。

「あっ、ドルトンね。はいはい。あそこの学校の名前は最近よく聞くね。なんだか、すごい学校だって評判だよ」

今年で開校から3年目。まだ真新しい校舎の中に入ると、中学校というよりもオープンイノベーションを目的につくられた研究施設のような印象を受ける。それでもすぐに子どもたちの声が聞こえてくると、「ああ、ここは中学校だったんだ」とわれに返った。

7月上旬、10時25分からの3時限目。中等部1年生の英語の授業を見学した。この学校では教科ごとに教室を移動するようだ。少しずつ生徒たちが集まってきて、授業開始時間には席が埋まる。その数、約20人とかなりの少人数だ。そこに英語科主任の布村奈緒子先生が登場した。よく通る声で生徒たちに英語で話しかける。

生徒は約20人とかなりの少人数。それに対して先生は3人だ

授業で日本語はほとんど使わない。英語の授業は習熟度別にクラスが分かれていて、生徒の希望で自由に選べるようになっている。このクラスは、中学で初めて本格的に英語を学ぶ生徒たちが中心のスタンダードクラスだ。入学してまだ半年も経っていないはずだが、先生の問いかけに対して、生徒たちは臆せず元気に英語で答えていく。

興味深いのは少人数クラスなのに、布村先生のほかに、2人のティーチングアシスタントがついていることだ。2人はインドネシア人とネパール人。母語のほかに日本語と英語が話せる。彼らは布村先生の問いかけに合わせて、生徒たち1人ひとりに、声がけや戸惑う生徒のサポートを行っていく。

まず授業では、今日行う授業の概要がスクリーンに示される。本日のテーマは「多様性」。生徒たちはグループに分かれ、先生が出す課題に対して、グループで意見を出し合いながら、答えを探っていく。そのうち生徒たちの声は教室中に広がる。「これ違うんじゃない」「ああ、そうか」。2人のティーチングアシスタントも英語でどんどんあおっていく。いつのまにか生徒たちは皆、夢中になっている。

ペアワークやグループワーク中心の授業。布村先生に加えて2人のティーチングアシスタントも積極的に関わりながらグループで意見をまとめていく

英語の授業だが、よく聞いていると教えている内容は文法や構文といった語学そのものというよりも、社会科の授業に近い。世界の国々の時間や食べ物の話から、「探険家(エクスプローラー)」をキーワードに最終的に異文化コミュニケーションから多様性を知るという本来の授業のテーマに落とし込んでいく。

最初はよくわからなかったが、途中から謎かけがあり、最後に「ああ、だから多様性なんだ」と見ているほうも腹落ちした。英語を教わったはずが、実際には英語を通して世界を知るという仕掛けが感じられた。

それはこれまで見てきた中学の英語授業とはまったく異なるものだった。今、多くの学校で課題となっているアクティブラーニングの授業を、布村先生はまさに実践していた。

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