ゴールデンウィークが終わると、この先にある夏休みの過ごし方について検討を始める家庭も多いのではないでしょうか。
近年、学童保育の受け皿が足りず、共働き世帯にとって、平日だけでなく長期休暇の子どもの預け先が切実な課題になっています。こども家庭庁によると、2024年4月における公設学童(放課後児童クラブ)の待機児童は約1.8万人でした。
しかし、最近では民間学童、塾に加え、プリスクール(英語の保育施設)やインターナショナルスクール、地方自治体、NPO法人、企業などが主催するサマースクールも多様化しています。
そこで幼児、小学生を対象とした夏休みのプログラムについて、サマースクールを開発した経験に基づき、子どもに適したプログラムを選定する際の着眼点をまとめました。

国際教育評論家、インターナショナルスクールタイムズ編集長
アメリカ・カリフォルニア州トーランス生まれの帰国子女。人生初めての学校である幼稚園をわずか2日半で退学になった「爆速退学」の学歴からスタート。帰国後、千葉・埼玉・東京の公立小中高を卒業し、大学では会計学を専攻。帰国子女として、日本の公立学校に通いながら、インターナショナルスクールの教育について興味を持つ。2012年4月に国際教育メディアであるインターナショナルスクールタイムズを創刊し、編集長に就任。その後、都内のインターナショナルスクールの理事長に就任し、学校経営の実務経験を積む。また教育系ベンチャー企業の役員に就任、教育NPOの監事、複数の教育系企業の経営に携わりながら、国際教育評論家およびインターナショナルスクールの経営とメディア、学校および海外のインターナショナルスクールから日本校の開校コンサルティングのセブンシーズキャピタルホールディングスの代表取締役CEOを務める
(撮影:今井康一)
サマースクール選びのヒント
サマースクールは、種類が豊富で選択肢も多岐にわたります。最適なスクールを選ぶためには、いくつかの点を考慮するとよいでしょう。
まずは、プログラムに参加する目的を明確にします。英語力の向上、異文化体験、科学やプログラミングといった特定の分野の学習、あるいは多様なアクティビティ体験など、何を最も重視するかを考えます。
次に、場所について検討します。国内のインターナショナルスクールやボーディングスクール、地域のスクールといった選択肢のほか、海外(マレーシア、イギリス、アメリカなど)のプログラムも視野に入れることができます。
期間と費用も重要な要素です。プログラムによって期間や費用は大きく異なりますので、予算や家庭のスケジュールに合わせて比較検討しましょう。インターナショナルスクールなどでは、プログラム費用とは別に登録費用が必要な場合もあります。
何よりも、子どもの興味・関心に合ったプログラムを選ぶことが大切です。子ども自身が「参加したい」と思えるような内容かどうかを確認しましょう。
また、とくに語学系のプログラムでは、参加に必要なスキル(例えば英語力)が設定されている場合があります。初心者向けから上級者向けまでレベルはさまざまですので、子どものレベルに適したものを選びましょう。
最後に、海外のプログラムを検討する場合は、申し込みから現地でのサポート体制がしっかりと整っているかを確認すると安心です。
これらの点を踏まえ、子どもにとって有意義な夏休みを過ごせるよう、早めに情報収集を始めることをお勧めします。
多様化するサマースクールの選択肢
サマースクールは多くの場合、短期間集中型で実施されます。子どもにとっても負担が少なく、普段の学校生活では得られない新しい知識やスキル、貴重な体験を得るよい機会となります。
朝から預かってくれる公設学童のサマープログラムから、日帰りの遠足型、宿泊を伴う自然体験型、プログラミング、アートのように教室に1週間ほど通う型、サッカーなどスポーツの宿泊型、英語で探究的な経験を中心としたインターナショナルスクールのサマースクールなど、その内容は多岐にわたります。

またサマースクールは、子どもの未来への投資と捉えることもできます。
子どもが何に好奇心を持っているのか、どんな分野に興味があるのか、得意なことや、さらに伸ばしたい能力は何か、何に時間を忘れて没頭するのか。
そうした点を見極め、親御さんが適切な選択肢を用意してあげることで、子どもの興味・関心を深め、才能やスキルを効果的に伸ばす手助けとなります。
「サマースクールマップ」で選択肢を整理
これまで、さまざまなサマープログラムの企画・運営に携わってきた経験から、多様化する選択肢を整理し、選びやすくするために「サマースクールマップ」を作成しました。

サマースクールの主催者はさまざまですが、選ぶ際には以下の要素に着目して絞り込んでいきましょう。対象学年とを選ぶ際には、以下の「計算式」を参考にするとよいでしょう。
• 対象学年
年齢によって通学型プログラムが適しているか、宿泊型キャンプが可能かなどが異なります。精神的な成熟度や体力も考慮しましょう。
• 場所
通いやすい場所か、宿泊型でしか体験できない内容かによって選択肢が分かれます。
• 言語
日本語だけでなく、英語やその他の言語で学べるプログラムもあります。子どもの能力や目的に合わせて選びましょう。
• 内容
子どもが興味・関心のある領域、あるいはどんな体験をさせたいかを明確にすることで、適したプログラムを選べます。アート・スポーツ・科学・自然体験など多彩な内容があります。
• 費用
家庭の予算に合わせて無理のない範囲で選択しましょう。
対象学年は必須条件であり、場所もある程度制約が出てくると思いますので、まずはこの2つの条件をもとにサマースクール情報を探します。さらにどの言語で、どのような内容をいくらで体験できるのか? で現実的な選択肢が見えてくるのではないでしょうか。
サマースクールの効果と課題
ただ、サマースクールマップを見てわかるとおり、多様なプログラムがあり、子どもの興味に合わせてタイムリーに申し込むには、親が情報を集めておく必要があります。
価格も短期間のため検討しやすいですが、複数のコースを申し込むと高額になります。子どもの夏休みをスケジュールと参加費から選んでいく必要が出てきます。
それでもサマースクールは、子どもたちにとって短期間で関心のある分野に集中して取り組める貴重な機会です。子どもの関心と体験が結びつくことで、自分の好きなこと、やりたいことに触れられ、成長につながります。
費用対効果がわかりやすく、保護者にとっても選びやすいプログラムが増えています。また、提供側にとっても普段は実施できない内容や日程で新たな取り組みを設定できる点が魅力です。
夏休みの過ごし方の1つとして、サマースクールについて調べてみてはいかがでしょうか。
(注記のない写真: zero one / PIXTA)