山崎翔平(やまざき・しょうへい)
個別指導の古賀塾 校長
SRP教育研究所 学習アドバイザー、医学部予備校講師、オンライン家庭教師。元アオイゼミ講師
学習アドバイザーとしての指導や映像授業のコンテンツ作成を行う
(写真は本人提供)

大学受験のための塾・予備校といえば、10年以上前は「駿台予備校」「河合塾」「代々木ゼミナール」を中心とする集団授業の形態が主流でした。しかし現在は「東進衛星予備校」や「河合塾マナビス」などの映像配信型、「TOMAS」のような個別指導型、「武田塾」のような自立学習型、「メディカルラボ」のような医学部専門などさまざまな形態が増えています。

入試制度も変わりました。2021年には共通テストが初めて実施されました。大学入試センター試験を置き換える形での導入で、共通テストは大学入試の選抜方法をより多様化し、幅広い学力評価を目指している点が特徴です。この変更は、日本の大学入試システムにおいて重要なステップだとされています。そこで今回は共通テストの特徴に触れつつ、多様化する予備校の特徴とおすすめの予備校を紹介します。

大学共通テストは「長文化」の傾向に

センター試験が基礎的な知識と理解を重視していたのに対し、共通テストは思考力・判断力・表現力を重視するようになりました。共通テストが始まって以降の傾向の変化を比較すると、従来は教科書や参考書の問題を覚えていれば解けるようなものが主でしたが、今は教科書の知識を使って自分で考えないと解けないものも出題されています。

また、問題文の文字数が増加しています。英語の試験は、センター試験の3500~4300字に対して現在は6000字。数学の試験でも「太郎さんと花子さん」の会話や日常生活と絡めた問題が出題され、導入文が非常に長くなっています。長い文章を速く正確に読む力も求められているのです。

私自身も指導する立場として、近年の子どもたちには長い文章を読む機会が少ない印象を持っています。YouTubeなど動画の影響で活字離れが進んでいるのでしょう。しかし入試問題は長文化している。すぐにできる対策としては、活字を読む習慣を作ることです。小説ほどでなくても、各科目の教科書を読んで理解できればよいでしょう。現在では映像授業も増えてわかりやすく説明を受けることができますが、文章を読んで自分自身で理解する力も必要だと思うのです。

集団予備校「駿台」「河合」「代ゼミ」の比較

大学受験塾・予備校として古くから大勢を占めるのは、「駿台予備校」「河合塾」「代々木ゼミナール」などの集団予備校でしょう。現在はどの予備校も上位クラスから下位クラスまで幅広く対応しており、それぞれの差異は小さくなっています。その前提で、これらの予備校を比較していきましょう。

●駿台予備校
駿台予備校は、東京大学や京都大学などの難関大学を目指す方の指導を得意としている予備校です。授業のレベルはかなり高く設定されており、個性豊かな講師陣が多いのも特徴です。コース数が非常に多いので、難関大を目指さない人でも自分の学力に合う授業を選ぶことができます。

●河合塾
河合塾は、塾訓「汝自らを求めよ」の精神のもとで自主性を重んじる予備校です。さまざまな講師がおり、講座が定員締切となる人気講師も多いです。幅広い大学の対策をしているため、多様な生徒が通っている印象です。オンライン授業にも注力しており、基礎学力アップのための「河合塾One」や映像授業の「河合塾マナビス」などもあります。このように校舎数が多い河合塾グループには、それだけ生徒情報も蓄積されているのも強みです。また「テキストの河合塾」と言われるように、教材選びにも力が入っています。

●代々木ゼミナール
代々木ゼミナールの最大の魅力は、講師やスタッフとの距離の近さでしょう。面倒見が良いという声をよく聞きます。「講師の代ゼミ」と言われるだけあって講師陣のレベルは非常に高く、テキストも各講師のオリジナルテキストです。

(画像:東洋経済作成)

集団塾以外の形態をとる塾や予備校の特徴

■映像授業の予備校
予備校講師が収録した授業をブースで視聴するシステムです。都心部でない地方の人でも、予備校講師の授業を受けることができます。自分のペースで受講できるため、先取り学習もできます。同様に、つまずいている科目や単元に戻って学習することも可能です。

■個別指導の予備校
近年、個別指導の予備校も増加しています。「メディカルラボ」などの医学部予備校も個別指導の予備校の1つです。予備校によって講師が大学生かプロかが異なり、どちらかを選択できるケースもあります。一方で、費用が高くなってしまう点は課題です。

■自立型学習の予備校
自立型学習の予備校も増加傾向にあります。「武田塾」がその代表です。講義型予備校は「習うこと」に重きを置いていますが、自立型予備校は「自分の手を動かして解くこと」に重きを置いています。最近は参考書も充実しているので、わざわざ予備校の授業を受けなくてもよいと考えることもできます。自分でやってみてわからない所を解決してもらえる環境を求める人には最適です。

■オンライン予備校
コロナ禍でオンライン学習の需要も増えました。自宅で映像授業を視聴する形式、映像授業予備校の在宅型、自立型予備校の在宅コーチング形式、自宅学習をサポートする形式、オンライン家庭教師などさまざまな方法があります。オンライン授業も、対面授業と遜色ない質を保持できるようになってきました。地方の生徒が都心部の講師の個別授業を受けたり、逆に地方大学を受験する生徒がその地域の講師の個別授業を受けるなど、居住地による情報格差などの影響を少なくすることが可能です。

(画像:東洋経済作成)

大学入試環境は、共通テストの導入とともに大きな変化を遂げました。この変化に対応するため、予備校業界も進化を遂げています。予備校の多様化によって、受験生はより適切な学習方法を選択できるようになりました。各自の学習スタイルや目標に合った予備校を選んだうえで、それがどこであっても効果的な学習計画を立てることが大切です。

(注記のない写真:Fast&Slow / PIXTA)