小児神経専門医が警鐘、問題生む「不登校=起立性調節障害」という誤解 加藤善一郎「背景に中学校の『かくれ校則』も」

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
依然として増え続ける不登校。最近はその一因に「起立性調節障害」という病気があることが知られるようになってきた。一方で、「誤解も生じている」と話すのは、小児神経専門医として不登校の子どもたちの診療に当たる岐阜大学大学院教授の加藤善一郎氏だ。不登校特例校の岐阜市立草潤中学校で「こころの校医」も務め、講演や著作を通じて起立性調節障害の啓発に取り組む加藤氏に、起立性調節障害から学校に行けなくなっている子どもの現状や、周囲が理解すべきことなどについて伺った。

起立性調節障害には「単純型」と「複合型」がある

――不登校の背景に多くの場合、起立性調節障害(Orthostatic Dysregulation/以下、OD)があることは認知されてきたようですが、改めてどのような病気かお教えください。

自律神経系の異常から循環器系の調節がうまくいかなくなる疾患ですが、花粉症(アレルギー)が体質であるのと同じように、ODも自律神経が弱い、感受性が強いといった体質によるものです。

頭痛、腹痛、倦怠感、立ちくらみ、朝起きられないなど、多様な症状が表れます。そうした症状から登校できなくなるのですが、夕方以降は元気になることも多いので、「うそをついているのでは?」「サボりでは?」などと誤解されがちです。そうではなく、体質に起因する病気だということをまずご理解いただきたいです。

――治療法はあるのでしょうか。

通常は水分の摂取量を多くしたり、血圧を安定させる薬を投与したりします。ODには「単純型」と「複合型」があり、OD単純型であればこうした治療で2~3週間後には症状が改善します。以前、医師から「怠けている」「親のしつけが悪い」と責められ、7年間も病院を転々としたお子さんがいましたが、私の外来に来て2週間後にはよくなりました。OD単純型の場合、適切な医療を受ければ大抵の場合、元気に登校できるようにもなります。

加藤 善一郎(かとう・ぜんいちろう)
岐阜大学大学院医学系研究科小児科学教授、日本小児科学会および日本小児神経学会の専門医・指導医
臨床医としての経験と研究活動を生かし、発達障害・不登校の臨床と地域連携を進めている。2021年に不登校特例校の岐阜市立草潤中学校「こころの校医」就任、教育医療連携ネットワークも立ち上げた。ODへの理解を広げるため『マンガ 脱・「不登校」』(学びリンク)をシリーズ化、22年9月21日に3冊目を刊行予定
(写真:本人提供)

――今も適切な医療にたどり着けないケースは多いのですか。

ODの認知拡大とともに治療可能な小児科が増え、OD単純型のお子さんは適切な医療につながりやすくなりました。一方で、親御さんや学校の先生、医師の間に「不登校=OD」という誤解が広がっており、ODの治療をしているのになかなか登校できないと「なぜ?」と困惑されてしまう問題が起きています。

次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事