小児神経専門医が警鐘、問題生む「不登校=起立性調節障害」という誤解 加藤善一郎「背景に中学校の『かくれ校則』も」

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OD複合型の場合は、本人の体質や特性といった内的環境だけでなく外的な環境の影響も大きいので、治療の段階からその面でのケアが大切になります。

――外的環境の影響とは?

主に家庭と学校の環境ですが、最も大きいのは学校ですね。私は、教育の歪みは中学校がいちばん大きいと思っています。内申書をはじめ、とくに「かくれ校則」が不登校の最大の原因ではないかとみています。これは私の造語ですが、要は非公式のルールのようなもの。

例えば、先生が質問したら生徒は「全員挙手」とか、休み時間なのに次の授業が始まる3分前には勉強を始めなければいけない「3分前学習」のほか、ノートの取り方など個々の学習面に及ぶ決まりもあります。先生が授業ごとにクラスの態度や提出物などを5段階で評価し、すべて5をもらう「オール5day」を年間150回目指すことを掲げる学校もあり、生徒同士で「お前のせいで5がもらえなかった、内申書に響くじゃないか」と言ってけんかになったりもしています。

今は中学校のこうしたルールが小学校にも降りてきているほか、コロナ禍で生まれたルールもあり、子どもたちは不安と緊張でいっぱいになっています。OD複合型の場合、こうした外的環境が大きく影響します。

そのため私の外来では、中2くらいまでの年齢のお子さんは、登校をゴールとせず、自分に合った高校を見つけて卒業することを目指して治療を進めています。皆さん高校進学を強く希望されており、私もほぼ毎日進路や学習の相談に乗っていますが、とくに困っているのが、ODは病気であるのに診断書を出しても病欠にしてもらえない場合が多いこと。進路に関わることですので、少なくとも病欠は認めていただきたいです。

「何もしない」ことがいちばんの支援

――ODの児童生徒に対して、学校や教員は何をしたらよいのでしょうか。

逆説的ですが、何もしないことがいちばんの支援になります。ODについての理解は教育現場にも広まりましたが、OD複合型への理解はまだ十分ではありません。理解不足のまま的外れのことをすれば事態は悪化しますので、まずは生徒が何に困っているか、どういう状態なのかをよく見ていただきたいです。

例えば、板書をノートに書き写すのが苦手な子どもがいたら、その子のやりやすい方法を尊重してあげてください。まずは観察すること、そしてOD複合型についてきちんと理解すること。そうすれば、「何もしないこと」の重要性、つまり頭ごなしに叱ったり苦手なことを無理やりさせたりするのがどれだけよくないことなのかがわかるようになるはずです。

これは医師も親御さんも一緒です。医師は薬を処方すれば何かやったような気になりがちですし、お子さんの意欲が少しでも出てくると親御さんは「じゃあ学校に行こう」と引っ張ってしまいがち。周囲の方々には“理解ファースト”でお願いしたいです。

――不登校特例校の岐阜市立草潤中学校で「こころの校医」を務めておられます。ここでも先生方に「何もしないで」とおっしゃっているのですか。

はい。2021年4月の開校前日の研修会でそう話しましたが、「何かをしよう」と志を持って赴任されてきた先生ばかりでしたからカルチャーショックだったようです。しかし、今は「何もしない」を十分にご理解いただけていると感じます。実際、学校が好きになる子が出てくるなど、生き生きと過ごしている子は多いです。草潤中には「かくれ校則」がありませんので。

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