英語「小学校でどう学んだか」で能力差、中学で「苦手」避ける授業づくりのコツ 小・中連携で段階的にレベルアップしている
このような、小学校での英語教育の内容や環境の違いが、背景の1つとして考えられると思います。また小学生、とくに低学年の児童には、「あまり難しくならないように」という理由から、「文」よりも「単語」を重視して教える先生も少なくなく、英語によるコミュニケーションに慣れ親しむ環境づくりができていないことも考えられるでしょう。
「小学生のうちから英語の塾に通い、英語に触れる時間が長い」といった、学校以外での英語の学習状況の影響も、少なからずあると思います。
「話せる喜び」が感じられる授業づくりが大切
――この課題を解消するために、中学校の英語教員はどのような指導を心がければよいのでしょうか。
佐藤 中学入学時点で能力差があることは、英語に限らず、ほかの教科についても同様です。たとえ入学直後の成績が思わしくなくても、英語の授業に興味を持って一生懸命学習に取り組めばすぐに追いつきますし、結果も後からついてくるものです。
英語の授業に興味を持ってもらうためには、生徒が「英語が話せて楽しい!」と思ったり、「自分が発した英語が先生や友達に通じて自信が持てた」などといった、“話せる喜び”が感じられるような授業づくりが大切だと思います。

玉川大学大学院教育学研究科 名誉教授
津田塾大学学芸学部、同大学院文学研究科博士課程を修了後、ロンドン大学大学院博士課程留学。専門分野は言語心理学・応用言語学・英語教育。 乳幼児の言語獲得・発達を研究し、その科学的成果に基づく英語教育を提案している。NHKラジオ「基礎英語」講師を8年務め、現在はNHK eテレ「えいごであそぼ with Orton」「エイゴビート2」の総合指導や監修を行う。多くの教育委員会や小学校で英語研修講師や講演を行い、小中一貫英語教育を推進している。2016年度より、町田市教育委員会の委託を受け、「放課後英語教室」を主宰。幼稚園でのカリキュラム策定や教員研修も行っている。21年よりワールド・ファミリー バイリンガル サイエンス研究所(IBS)主催による小学校英語教員向け勉強会に参画、英語指導教員と定期交流を図っている
(撮影:梅谷秀司)
――“話せる喜び”が感じられるような授業づくりのポイントについて教えてください。
佐藤 1. 授業に入る前に、身近な話題について英語でちょっと対話する「オーラル・イントロダクション」を取り入れる、2.「書く時間」よりも「口頭によるやり取り、ディスカッションの時間」を重視し、「書く時間」はタブレットの活用などにより宿題で補うようにする、3. 生徒とつねに英語でやり取りをしながら授業を進める、4. 少人数によるスピーキングの時間を意識してつくる、5. アウトプットする「パフォーマンステスト」を工夫して積極的に行う。この5つを意識していただくとよいと思います。
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