教員に残業代出ない理不尽な法律「給特法」の改正、廃止機運は高まるか 学校の「ブラック化」に一石投じる裁判の行方

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

「文科省はこれを法規であり、学習指導要領を実施しなかった場合は、非違行為として懲戒処分の対象になりうると各種文書を通して主張しています。コロナ禍において、学習指導要領は複数年かけて実施することを認めましたが、これは必ず学習指導要領を複数年かけてでも必ず実施せよ、という意味。学習指導要領をなくせとは言いませんが、法規扱いをやめて参照基準とし、各学校、各教室が子どもの実態に即した教育課程を柔軟に組んで授業を実施できるよう、今の運用を変えるべきです」

こうした状況を長年見てきた髙橋氏は、「もっと文科省は現場を信用すべき」と話す。先月、現場から不評を買っていた教員免許更新制が廃止されたが、代わりに個々の教員が受講した研修の履歴を管理される仕組みが導入された。これも、現場を信用していない表れだという。

「この教員不信は、戦後に形成された文部省対日教組という構図が今に引き継がれているもの。ですが、日教組の加入率は20.8%(21年10月現在、文科省調査)と、かつての対立図式は過去のものとなっているわけで、そろそろ教員いじめの施策は終わらせるべきです。現場の声を聞かない限り、有効な働き方改革が進むわけがありません」

理不尽な法律と文科省・財務省の思惑でがんじがらめになっている学校現場は、民主主義がないに等しい。日本という民主主義国家の担い手を育む学校で、教員の発言権、いや人権さえも保障されていない状況で、子どもの人権も保障されるわけはなく、この国の将来さえも危ぶまれる。今、声高に民主主義を叫ぶ政治家がいるが、彼らこそ国の礎となる教育の実践現場を直視し、誰に向かって民主主義を訴えればよいのか再考すべきだろう。

髙橋哲(たかはし・さとし)
埼玉大学 教育学部 准教授
日本学術振興会特別研究員、中央学院大学専任講師、コロンビア大学客員研究員(フルブライト研究員)などを経て現職。專門は教育法学。近著に『聖職と労働のあいだ ――「教員の働き方改革」への法理論』(岩波書店)。そのほか『現代米国の教員団体と教育労働法制改革――公立学校教員の労働基本権と専門職性をめぐる相克』(風間書房)、共著に『迷走する教員の働き方改革――変形労働時間制を考える』(岩波ブックレット)、共訳書にジャック・ジェニングズ『アメリカ教育改革のポリティクス――公正を求めた50年の闘い』(東京大学出版会)、分担執筆に日本教育法学会編『コンメンタール教育基本法』(学陽書房)など多数
(撮影:風間仁一郎)

(文:田中弘美、注記のない写真:Luce / PIXTA)

関連記事
公立学校教員の「働かせ放題」合法化する、理不尽な法律「給特法」変えるカギ 教育の質に関わる社会課題として向き合うべき

東洋経済education × ICT編集部

東洋経済education × ICT

小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事