16代目クラウンが何とも大胆な変身を遂げた意味 目指すのはレクサスにもベンツ、BMWにもない境地
実際のところ、クラウンには抜本的に変わらなければならないタイミングが迫っていた。
その販売台数は、全盛期(1990年:20.9万台)の10分の1である年間2.1万台(2021年)に低迷。トヨタ自身が上級車種として「セルシオ」や高級車専門のレクサス・ブランドを投入したこと、輸入車各ブランドの台頭、お抱え運転手が要人を運ぶショーファー・ドリブンとしての需要がアルファードをはじめとする高級ミニバンに移ったことなど、高級車市場の多様化を反映していた。
クラウンといえば、多気筒エンジンを縦置きし、後輪駆動レイアウト(FR)にすることでエンジンやステアリングの滑らかなフィーリングを楽しむ、というのが長年の伝統だった。
しかし、そもそもFR車はボディサイズのわりに室内を広くしにくいというデメリットが存在する。たとえば「レクサスGS」が廃番になるなど、中型クラスでFR車の需要が国際的に衰退した結果、販売規模の小さいクラウンが、高いコストを費やして後輪駆動プラットフォームを使い続けることは難しくなっていた。電動化の流れが急速に押し寄せ、クラウンの販売実績も4気筒のハイブリッド車がほとんどになる中で、FRベースにこだわり続ける理由も、もはや希薄であった。
中高年男性向けでもなく車型も多様に
「FRレイアウト」と同時に、「車型は3ボックス・セダン」「ターゲットは中高年男性」というふたつの伝統的前提もリセットされた。結果として、「クロスオーバー」を筆頭に4つのモデルが派生し、前後それぞれにモーターを備え、フロントに4気筒エンジンを横置きする2種類の4WDハイブリッド・システムが「ハリアー」や「RAV4」に用いられるGA-Kプラットフォームに搭載されることが決まった。
筆者が驚いたのは、中嶋プレジデントの弁によれば、現行クラウン・マイナーチェンジ案が豊田社長により却下されてから、新型クラウン・ファミリーの発表までわずか2年数カ月しか要していないということだ。
それゆえかどうか、クロスオーバーのスタイリングは、どこから眺めてもまったくクラウンっぽくはないけれども、まるで若手デザイナーのスケッチを忠実に実車にしたように生々しい。
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