英メディア「安倍氏銃撃で日本は永遠に変わる」 「信じられない」各社が事件を大きく伝えた
2000年、リベラル系野党・自由民主党のニック・ジョーンズ議員が南西部グロスタシャーの事務所で対話会を開いていると、男性が刀を手にして入ってきて、議員に傷を負わせようとした。議員は手と腕への負傷で終わったが、かばおうとした事務所職員の男性が刺し傷を負って死亡した。男は傷害罪で刑務所に入るところをジョーンズ議員が救ったことがあったが、精神を病んでいたという。
2010年、労働党議員スティーブン・ティムス氏がロンドン東部の選挙区内の対話会が開かれた会場の外にいたところ、一人の女性が議員に握手をしようと近寄り、議員の腹部を台所で使うナイフで2度刺した。議員は重傷を負ったが、命は取り留めた。女性はイスラム過激主義に心酔し、イラク戦争(2003年)開戦を支持した議員に対し、抗議の殺生を試みた。
人々の記憶にまだ強く残っているのが、2016年6月の労働党議員ジョー・コックス氏の殺害だ。この時、欧州連合(EU)からの離脱の是非について、数日後に国民投票が行われることになっており、離脱か残留かで国民の意見は二手に分かれていた。
コックス議員はEU残留派だった。イングランド北部バーストルの地元選挙区で対話会に向かう途中、極右主義に傾倒する離脱支持の男性に銃撃され、死亡した。
そして昨年10月、今度は保守党議員デービッド・エイメス氏が犠牲になった。イングランド地方南部エセックスの地元選挙区で行われる対話会の場所に入っていくと、中にいたイスラム過激主義を信奉する男性に複数回刺され、死亡した。
政治家の警備はどうなっているのか
イギリスでは、選挙戦になると、候補者は選挙地区を訪れ、路上で有権者と会話をするのが通例だが、事務所の職員や秘書、警備担当者などの数人に囲まれている。地元選挙事務所で対話会を行う際にもスタッフが一緒にいるが、議員は警備担当者を連れてきたがらない。有権者が相談事をする際に警備担当者がいては「邪魔になる」と考えるからだ。
対話会に参加する際には特に警備チェックは行われてこなかった。ふらっと訪れて、自分たちを代表する議員と直接会話ができる貴重な機会である。有権者と顔を合わせ、率直な会話をする対話会こそが「民主主義の基本を成す」と議員たちは考えている。
しかし、2016年のコックス議員の銃撃死は政界に大きな衝撃を与えた。「民主主義は維持したい、対話会参加の垣根はできうる限り低くしておきたい」という思いと、「でも、怖い・殺されたら困る」という気持ちとの兼ね合いを考えざるを得ない。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら