英メディア「安倍氏銃撃で日本は永遠に変わる」 「信じられない」各社が事件を大きく伝えた

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「日本では暴力的な犯罪が発生する可能性はあまり想定されていない」。というのも、銃の所持が「極めて難しい」からだ。所持するには犯罪歴がないこと、研修を受けていることなど数々の条件が付き、障壁が高い。結果として「銃を使った犯罪がほとんどない」。銃を使った犯罪による死は「年間10件もない」。

特派員の関心は犯罪の動機に向かう。「かつては日本でも政治家の暗殺事件があった」。1960年、日本社会党の浅沼稲次郎委員長が日比谷公会堂での演説中に右翼団体の団体員に刺されて即死した事件があった。「しかし、安倍氏は右派系国家主義の政治家であったから、右翼思想の青年の攻撃対象にはならないだろう」。

近年、日本で目立つのが「静かで、孤独の男性が誰かあるいは何かに憤りを感じて、殺傷事件を起こす例だ」。2019年の京都アニメーション放火殺人事件は「自分の作品を盗んだ」と主張する男性が犯行者で、2008年の秋葉原通り魔事件では、「誰も友達がいない」「自分は無視されている」と感じた男性が引き起こした、と指摘する。

実行犯の動機は何にしろ、安全であるがために警備が緩かった日本は変わらざるを得ないだろう、と特派員は予測する。

日本では選挙戦で政治家が通りに立って演説を行い、通行人と握手する。今回の事件でも、攻撃者は政治家の近くに位置し、自家製の武器を使うことができた。「今日の事件で、警備体制は変わらざるを得なくなるに違いない」。

イギリスでも議員は被害にあってきた

20世紀以降、イギリスの政治家で殺害された例を振り返ってみると、1990年代まではイギリス領北アイルランドでイギリスからの独立を求めて武力闘争を行った「アイルランド共和軍(IRA)」やその分派によるテロ事件があった。1979年、1984年、1990年に発生し、いずれも保守党議員が殺害された。宿泊先のホテルや車に仕掛けられた爆弾が命を奪った。

2000年代になると、特定の場所での殺傷・殺害事件が発生してくる。下院議員が地元選挙区の有権者と直接顔を合わせ、生活の悩み事などを聞く「サージェリー」と呼ばれる対話会合の場所やその近辺だ。

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