「一律一斉授業」を見直した公立小教員が思う「自ら考え学ぶ力」の育み方 「主体性が出ちゃう場」をつくるのが教員の仕事

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コロナ禍で中止となった林間学校の代わりに実施した学校内でのワンデーキャンプでは、子どもたちに活動の中身を考えてもらった。iPadを持ってオンラインでつながった状態でリモート鬼ごっこをしたり、昼食は耐火煉瓦を組み火をおこしてレトルトのご飯とカレーを湯煎してみんなで食べたり。

ワンデーキャンプの様子

自分たちのアイデアが形となった1日は、忘れがたい思い出になったことだろう。後日、卒業アルバムに「こんな経験ができたのは自分たちだけ」と書いた子もいた。「子ども中心の授業へと大胆に変えていなければ、こんなふうに子どもたちに任せる行事もできていなかったと思います」と、大窪氏は振り返る。

ICTも積極活用、「ジェネレーターでありたい」

2020年12月以降は、配備されたGIGA端末も活用し、ゲストティーチャーによるオンライン授業や、市内の他校とオンライン学習発表会なども実施。会社活動の一環で学級ホームぺージも作り、子どもたちに編集権を与えて自由に編集できるようにもした。

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大窪氏が“ホームページ制作会社の社長”として社員を募集、8人の子どもたちが“副業”として参加し、編集に携わった

また、GIGA端末は「大切に使うことと学習のために配置された端末であること」を伝え、まずは子どもたちの判断で使わせた。そして課題が見えてきたところで改めて目的を確認し、子どもたちが話し合ってルール作りを行う形を取ったという。

ほかのクラスと異なるルールになった場合は、校長やほかの教員が納得できる理由を子どもたちに考えてもらい、大窪氏が間に入って調整を図った。そんな過程を経て、昨年度は児童会が中心となり、学校全体のGIGA端末の使用ルール作りが行われたそうだ。

全国の学校で講演活動を行っている前出の露木氏(露木氏のインタビュー記事)は、こう語る。

環境活動家の露木志奈氏(左、撮影:竹花康)。露木氏が感動したという子どもたちのポスター(右)

「大窪先生の学級は、とにかくみんなが輝いていました。子どもたち同士でルール作りをしているし、私の話を聞いて実際にアクションを起こしてくれた子もいる。公立校でありながら、通常の学習はもちろん『自分で考えて行動する力』を備える取り組みも行う、今まさに『みんなが目指したい学級経営』をなさっているのではないでしょうか」

昨今、主体性を育むために教員はファシリテーター(促進者)であるべきだとよく言われるが、大窪氏は「ジェネレーターでありたい」と言う。

「ジェネレーターとは、市川力さんと井庭崇さんが提唱する考え方で、場をファシリテートしながら自身も参加する存在のこと。もちろん意見を押し付けないよう気をつけますが、教師と子どもの境界線をなくしたいので、僕もクラスの一員として参加することを意識しています。とくに最近は、主体性はワークをやらせて育ったりこちらが引き出したりするものではなく、“主体性が出ちゃう場”によって発揮され育まれるものではと思うようになりました。そんな場や環境をつくることが、僕たちの仕事ではないかと考えています」

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