「一律一斉授業」を見直した公立小教員が思う「自ら考え学ぶ力」の育み方 「主体性が出ちゃう場」をつくるのが教員の仕事

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手応えを感じ、その後、同じく米国発のリーディング・ワークショップ「読書家の時間」も始めた。このほか、算数では単元内自由進度学習、社会では自ら問いを立てて解決していくプロジェクト型学習をスタートするなど、すべての教科で従来の一律一斉型の授業を見直した。一方で、子どもたちに戸惑いはなかったのか。大窪氏はこう話す。

「どの活動も、まずは趣旨や狙いを説明して『どう思う?』と投げかけます。例えば、作家の時間を始める際は、アンケートを取ったうえで『苦手だけど書けるようになりたい人が多かった。作家の時間はよりよい書き手になるための活動だけど、やってみる?』と聞き、みんながやりたいと言ってくれたので始めました」

「学年のやり方にそろえてほしい」「来年の担任が大変ではないか」と周囲に反発されて学びの転換に苦労する教員も多いようだが、大窪氏は恵まれた環境にあったと話す。

「今までの取り組みや研究主任という立場から『あいつ、また変なこと始めたな』くらいに思ってもらえた面があったのかもしれませんが、周囲は肯定的でした。翌年もクラスが持ち上がり、保護者に信頼して任せていただきながら進めていけた点も大きかったと思います」

とはいえ、もちろん管理職には事前に狙いをしっかりと説明し、うまくいかなければやり方を変えることはつねに心がけた。子どもたちの意見を聞こうと、企業の取り組みを参考に「1 on1」も導入。給食の配膳の待ち時間を利用して毎日数名ずつ、1対1でインタビューする時間をつくった。

すると、さまざまな意見が出てくる。例えば「私は自由進度学習をいいと思うんだけど、あの子たちはよくわかってなかったから、ちゃんと説明してあげたほうがいいよ」といった声から、授業の冒頭で考え方のポイントをより丁寧に話すようにした。そんなふうに日々、子どもたちと相談しながら、改善を重ねていった。

【2022年07月14日11時30分追記】大窪先生の授業改善について、「一斉授業を一切やめた」と受け取れる表現が一部あったため、見出しを含めてその部分を訂正しました。

学習の時間が終わっても探究し続ける子どもたち

しだいに、子どもたちは自ら考え、話し合い、行動するようになっていく。例えば、逗子の魅力を探す総合的な学習の時間では、商店街に取材に行きたいと言うのでアポ取りだけサポートしたが、子どもたちは話を聞くだけでなく撮影も行い、食レポートなどを盛り込んだ動画まで制作した。

環境学習の一環で環境活動家の露木志奈氏を招き講演をしてもらった際は、一部の子どもたちが刺激を受け、笹でストローを自作してクラス全員に配布。さらに、翌年には「そもそも学校からストローをなくしませんか」と呼びかけ、給食の牛乳パックをストローなしで飲める開封法を編み出してクラスに広めた。

笹を採りに行く子どもたち(左上・右上)。笹で作ったストロー(左下・右下)

「その後もストローをなくすにはどうしたらいいのか、栄養士さんを通じて業者さんに相談するなど自主的に取り組んでいました。学習の時間が終わっても興味のあることを探究し続けて、すごいなと。本当の主体性とは、こうやって学びが続いていくことだと思います。クラス全体としても『これやっていいですか』と僕に聞く前に動き出すようになり、とにかくやってみようという文化ができていった気がします」

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