PTA「やりたくない」は前例の見直しで変わるか、ボランティア制への道のり 義務や強制をやめ、「前向き参加」に必要なのは

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石橋健次(いしばし・けんじ) 2018年度より、新宿区内の公立小PTA会長を務める。3人の子どもの父親
(写真:本人提供)

ちなみに、「ぱ(P)っと楽(T)しく遊(A)びましょう」は、音楽ユニットPerfumeが、ライブで「ぱっと楽しく遊ぼう(Patto Tanoshiku Asobou)」の頭文字を取ったP.T.Aコーナーを設けており、そこから借りてきた言葉だという。

3人の子どもを持ち、一人のPTA会員として、学校の手伝いなどのPTA活動に関わってきた石橋氏。「女性の参加が多い中、男性で学校にちょこちょこ顔を出していたのが珍しく、頼みやすいと思われたのか(笑)」(石橋氏)、いちばん下の子が小2の時、他薦によりPTA会長に就任した。

「子どもたちがお世話になった恩返しの気持ちもあり、引き受けることにしました。ちょうどその頃、勤務先でコンプライアンスの推進を行う部署にいたこともあり、PTAにおいても理不尽な強制はあってはいけないと。それまでも強制加入ではありませんでしたが、とくにPTAに初めて関わる新入生の保護者には、入学後の保護者会のときなどに、折に触れて任意加入であることを説明しました」という。

委員会・係を廃止し「チーム制・エントリー制」へ

強制加入ではなかったが、組織や運営方法は旧態依然としていた。

「それまでの組織は、PTA本部の下に6つの委員会、6つの係があり、役割が非常に多かったです。それぞれの人数も多く、保護者一人ひとりの負担を軽減することを目的とするという名目で『1家庭1制度』とされ、ほぼ全員の保護者が何らかの役割に就かなければならない状況でした。加えて、『6年間で最低でも1回は委員(本部役員を含む)に就くこと』というルールがあったのです。理由があってPTA活動ができない保護者の不安感をあおってしまったり、『何もしない人は許さない』といった空気が漂ってしまったりするのは、PTA本来の姿ではないと感じました」

前年度までのPTAを牽引してきた役員が引退した後の本部役員は、石橋氏を含め働いているメンバーが多く、“役員若葉マーク”の保護者ばかりだったというが、「だからこそ、自分たちでこの状況をなんとか変えていこうと“決起”しました」と、石橋氏。

これまでの活動の一つひとつを見直し、

・ その活動に意味はあるのか、無駄はないか。
・ その活動は、「これまでやってきたからやらねばならない」からのスタートになっていないか。

といった視点から、議論を重ねた。忙しいメンバーが多く対面で集まる機会を設けることが困難だったため、Slackが議論の場となった。

保護者にもPTA活動に対するアンケート調査を行った結果、「活動時間が合わない」「業務量が多い」「活動の意義が見えない」という声が多く上がり、会長2年目の19年度末、これまでの1家庭1制度を廃止。新しく「チーム制・エントリー制」への移行を決定した。

「チーム制・エントリー制」とは、「校外チーム」「広報チーム」など13のチームを決め、それぞれの活動内容、活動時間、ゴール(意義)を明確化し、保護者から「これならできそう」「これならやってみたい」というチームにエントリーしてもらう仕組みだ。

「学年やクラスから○人」という枠を取り払って全学年から募り、希望者の人数を見ながら本部役員が調整を行い、チームに人が集まらなかったら、その活動は行わない、というルールとした。

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