強制加入や前例踏襲の運営に疑問の声続々、退会増える「PTA連合」の行方 PTAを束ねる団体が存在意義を問われるワケ

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任意加入に移行、ボランティア制の導入など負担軽減、参加しやすさを目的に改善を進めるPTAが増えてきている。その一方で、従来型の運営スタイルから脱却できず、その目的が疑問視され退会の動きが見られるのが、各校のPTA(単P)を束ねる地域のPTA連合(P連)や、その上部団体だ。つい先頃、東京都小学校の市区町村P連を束ねる東京都小学校PTA協議会(都小P)で、上部団体「日本PTA全国協議会」(日P)からの退会が決議され話題となっている。P連の役割とは何か。抱える課題と、あるべき姿とは。東京都八王子市で長年PTA活動に携わり、八王子市立小学校PTA連合会の顧問を務める櫻井励造氏、京都市PTA連絡協議会前会長の大森勢津氏、東京都世田谷区の公立小学校でPTA会長を務め、『政治学者、PTA会長になる』を出版した専修大学教授の岡田憲治氏を取材した。

「単Pの活動で手いっぱいでP連まで手が回らない」

「P連」とは、「PTA連合」の略。各学校のPTAは「単位PTA」=単Pと呼ばれるが、地域のP連は市区町村ごとの単Pを束ねる団体で、「○○市PTA連絡協議会」「△△区立小学校PTA連合会」「◇◇PTA協議会」など、地域により名称は異なる。

P連に加入する単Pは、P連の運営資金としてPTA会費の一部を分担金(地域により金額は異なるが、1児童もしくは1世帯につき年額10円単位〜100円単位が多い)としてP連に支払う仕組みになっている。

多くのP連は、「研修の開催などを通して単P同士の横のつながりをつくり、情報発信する」「学校横断的な声をまとめ、行政に伝える」などを存在意義に掲げているが、「役職が“輪番”で回ってくる」「目的不明の懇親会が常態化している」などの強制的、前例踏襲的な運営方法が疑問視され、近年、退会校が増加傾向にある。

市内に70の小学校がある東京都八王子市。同市の八王子市立小学校PTA連合会の加盟校は、2012年度は70校中46校(加盟率65.7%)。その後も年々減少傾向が進み、22年度の加盟校は、70校中39校。加盟率は5割強まで減少してきているという。

櫻井励造(さくらい・れいぞう)
2020年より、八王子市立小学校PTA連合会顧問。11〜16年小学校PTA会長、17〜19年八王子市立小学校PTA連合会会長。3人の子どもの父親
(写真:本人提供)

八王子市立小学校PTA連合会顧問の櫻井励造氏は、その背景について、「単に、P連の運営方法や、加盟することによる負担の大きさだけが問題なのではない」と分析する。

「P連を構成するのは、各校のPTA会長など本部役員であることが多いのですが、PTA会長や本部役員に初任者が多い場合、まずは自校のPTAを理解し自校のPTA活動と向き合うことが最優先となります。『単Pの活動に手いっぱいで、P連の活動にまで手が回らない』『P連なんかに関わっていられない』という切羽詰まった状況から、P連を退会するケースが多いのが実情です。また、単Pの皆さんのお仕事や私生活の状況は毎年変わるものなので、それに伴う部分もあるとも思います」という。

保護者のスポーツ大会は、参加校による自主運営に移行

櫻井氏は、10年度に八王子市の公立小学校でPTA副会長を1年務めた後、同校でPTA会長を6年間務め、17年度から19年度に八王子市立小学校PTA連合会会長を経て20年度から顧問となった。

豊富なPTA活動経験を通じ、「地域のP連のいちばん大切な役割は、“単Pの上部組織”ではなく “単Pの集合体”として、運営上の困り事の相談に乗ったり、支援を行ったりなど単Pの下支えを行うこと」と捉える櫻井氏。

P連会長時代は、P連本部やさまざまな事業における不要な確認、無駄な作業、非効率な運用を可能な限り排除しつつ、運用とそれに係る資料の簡素化を進めたのに加え、自らの発信を通して「P連は単Pを下支えする組織であること」という意識を浸透させ、単P会長やP連本部役員の“自分事化”に努めた。

オンライン化も推進し、Googleフォームを利用したWeb総会、Zoomによる定例会、ビジネスチャットツールLINE WORKSによる情報共有などを行ってきた。

さらに、ホームページをリニューアルし、活動内容や単Pの取り組み事例などを可視化。事業の具体的な実績や資料だけでなく、PTA活動で使える文例のテンプレートなどもわかりやすく掲載しており、八王子市内だけでなく、全国のPTA関係者から問い合わせが来るという。

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