義務感、強制感ゼロ「PTAをなくした」学校の実際 自由意志のボランティアで子ども支えられるか

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子どもたちの健やかな成長を目的に保護者と学校、地域が協力し合ってさまざまな活動を行うPTA。「活動負担が大きい」「義務感、強制感、前例踏襲感が強い」などネガティブな声が聞こえる中、従来の組織を廃止し新たな団体を立ち上げ、すべての会員が義務感を感じることなく活動する学校も少しずつ増えてきている。東京都大田区立嶺町小学校は、2013年度をもってそれまでのPTAを廃止、1年の準備期間を経て15年度からすべての活動を“ボランティア制”で行う「嶺町小PTO」として生まれ変わった。PTAとPTOは何が違うのか。発足後、活動はどのように変化し、現在はどのような体制で運営しているのか。中枢メンバーとして活動する2人の保護者に話を聞いた。

義務化していたPTA活動を廃止、ボランティア制の団体「PTO」ヘ

「嶺町小PTO」とは、「保護者と先生による楽しむ学校応援団」(Parent -Teacher Organizationの略。Oは応援団の掛け声「お〜っ!」でもあるという)。2015年にこの団体に生まれ変わる以前は、ほかのPTAと同様の悩みや問題を抱える組織だった。

「くじやじゃんけんなど半ば強制的に役員や委員を決め、やらなくてもいいと思う活動でも前例の踏襲で継続するなど、問題が山積みの状態でした。当時、他薦でPTA会長になった男性がこのような組織のあり方や運営方法に疑問を呈し、『子どもたちのための活動を誰もが気軽に楽しめる団体に変えよう』と改革に取り組みました。保護者にPTAに関する意識調査アンケートを行い、そこに集まった声を基に、学校や地域と対話を重ね、PTAから『できる人が、できるときに、できることをやる』を基本理念としたPTOとして新たにスタートさせたのです。

PTOにした時点で、それまで加入していた区のPTA連合会を脱退しようかという声もあったのですが、他校と情報交換ができること、区全体の保護者を代表して行政に対し提言ができることにメリットを感じ、PTA連合会には引き続き加入しています」と言うのは、改革期を含め4年間、いわゆる“本部”に所属した後4年間の“お休み”期間を経て、21年度から団長(PTA会長的な役割)を務める星義克氏。

星 義克(ほし・よしかつ)
大田区立嶺町小学校PTO団長
2013〜16年度、本部、ボランティアセンターでWeb担当として活動。「中心メンバーがずっと残るよりも、適度に入れ替わりながら運営が継続されることが必要」と感じ、4年間ボラセンを離れ、21年度に第5代団長に。高1、中1、小4の3人の子どもの父親
(撮影:梅谷秀司)

嶺町小PTOの大きな特徴は、義務化、形骸化していた「委員会制」を廃止し、行事ごとに手伝いを募る「ボランティア制」で運営していることだ。

PTO会員である保護者は、入会すると「サポーター」として、できるときに、できる人が、やりたい活動やできる活動に参加し、子どもたちを支える(入会は任意だが加入率は100%。会費は1世帯につき年2600円)。

地元の商店街主催のイベント。運営はPTOで行い、読み聞かせサークルや近隣の中学校の生徒が手伝いに駆けつけた
(写真:嶺町小PTO提供)

運動会の会場の見回り、地域のお祭りの手伝い、町会行事の手伝いなどサポーターの募集は、PTO広報誌、PTOのホームページ(HP)、登録保護者へのメルマガを通じて行う。強制力は伴わず自由意志によるボランティアのため、「サポーターが集まらなければ規模を小さくしたり、やめたりすることも可能」というルールだ。

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