義務感、強制感ゼロ「PTAをなくした」学校の実際 自由意志のボランティアで子ども支えられるか

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儀礼的な定例会もなく、それぞれのキャパシティーに合わせて無理なく活動できることが楽しいようで、一度ボラセンスタッフになると、2〜3年続けてやる人が多いんですよ(笑)。ボラセンスタッフは、例年30〜40人くらい。毎年半分くらいのスタッフが残り、残りの半分が新メンバーという好循環が続いています」。こう話す昼馬氏に、星氏も続く。

「PTO立ち上げ当初、ボラセンメンバーはたったの十数人程度で、当時は運営が非常に大変でした。『少人数だと一部の人だけに負荷がかかってしまう』ということで、『メンバーを増やして活動ごとにチームに分ける』など改善を重ねていくうちに現在の組織スタイルになりました。PTAからPTOに変え、やりたい人、できる人を募集するボランティア制にしたことで、『今は子育てや仕事が大変でお手伝いできないけれど○年後にはできるかもしれない』など、その人にとっての適切なタイミングで参加しやすくなったことに加え、お父さんも手を挙げやすい風土がつくれたように思います」

改革当時の“熱”に触発され、その後それぞれが「できる時期」に団長に就任し、PTOを牽引する星氏と昼馬氏。だが星氏は「当時を知る保護者が年々減ってきている中、これまで培ってきたPTOの風土をどのように後継者に伝えていくのかが、今後のテーマだと思っています」と話す。

保護者の思いを形にできる「夢プロジェクト」

嶺町小PTO“らしい”取り組みの1つが、子どもたちのために「こんなことをやりたい」と思った保護者の思いを形にできる「夢プロジェクト」だ。会員なら誰でもHPを通して提案できる、継続を前提としない行事や活動で、企画・運営の意志がある会員の協力と学校の承諾の下で実施できる。

昨年度は、冬休み期間に「町たんけん嶺小クイズラリー」が開催された。発案者は、昼馬氏。町会の掲示板や商店街の店頭に地域や学校についてのクイズを掲示し、解答用紙にある地図を見て親子でクイズのある場所を確認しながら解答していく。参加した子は後日、町会や商店街のお店でお菓子などの景品を受け取れるという、子どもも地域もうれしいプロジェクトだ。

冬休み期間に開催された「町たんけん嶺小クイズラリー」
(写真:嶺町小PTO提供)

「コロナ禍で学校と町の人との交流が減ってしまっていることを受け、校長先生が、町会の掲示板に子どもたちの絵を貼らせてもらったり、商店街全体に流れるスピーカーを通して子どもたちが録音したメッセージを月曜日〜土曜日に放送する『地域とつながりプロジェクト』に取り組まれていることからヒントを得ました。期間を冬休み中と設定したため、各家庭が都合のいい時に密を気にせず気軽に楽しむことができるイベントとしてたくさんの親子に参加していただきました。『お店にたくさんの親子が来てくれてうれしかった』『商店街が元気になりました』などお店の方々もとても喜んでくれ、今年度も開催しました」と、昼馬氏。

これまでに、避難所生活を体験する「学校に泊まろう」、会員の知り合いである元南極観測隊の方を呼び「南極ってどんなところ? 講演会」、開校70周年記念PTOバザーに来た子どもたちが楽しめる「宝釣り」、多摩川の土手で行う大・鬼ごっこ大会「嶺小・逃走中」などさまざまな「夢プロジェクト」が実施されてきた。これらのうち、全校児童が対象のイベントの参加率は5〜6割前後。低・中学年の子どもたちを中心に、毎回大いに盛り上がるという。

「やってみたら楽しい」というメッセージを発信

自由で風通しがよい。自然体。無理をしていない。そして何よりも、楽しそう。どうしたら、嶺町小PTOのようなコミュニティーがつくれるのだろうか。

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