強制加入や前例踏襲の運営に疑問の声続々、退会増える「PTA連合」の行方 PTAを束ねる団体が存在意義を問われるワケ

「単Pの底上げのためには、学校の協力も欠かせません。京都市P連は、教育委員会といわば車の両輪で運営を進めています。また、市P連は校長会からの代表が役員の半数を占め、理事の半数弱が校長先生方なので、全市のすべての校長先生方にPTAの適切なあり方について理解を深めていただくよう働きかけていくことも大切なのではないかと考えています」
京都市には、市内各校の保護者約6万5000人に対して一斉配信できる「京都市PTA・学校幼稚園メール配信システム」が存在する。
「課題共有という意味では、20年のコロナ休校の際、メール配信システムを利用し、臨時休業期間中、教育活動再開後に心配なことや必要だと思うことについてGoogleフォームでアンケートを行いました。2万件を超える回答が集まり、集計結果を教育長に届けました。P連には、“保護者の思いを伝える受け皿”としての役割もあると思います」
都小Pに先駆け上部団体「日P」からの退会を提案
つい先ごろ、都小Pが総会にて日P退会を決議し、話題となっている。これに先駆け、22年3月に大森氏は市P連の理事会で、これまで加盟していた日Pからの退会を提案した。
「都小Pさんと課題意識はまったく同様。財政難の市からの補助金が削減される中、日Pへの年84万円(21年度)の会費負担が重いこと、PTA会員の意見を広く吸い上げ国に伝えるとともに、課題を共有し共に歩むという全国組織としての役割を果たせていると思えないこと、毎年約8000人を集める全国大会や運営方法などをめぐって課題があるのに、改善を求めても応じられなかったことなどが主な理由です。今は、コロナ禍の影響を受けたPTAを、新しい形で再起動する必要がある重要な時期。京都市は、“上”ではなく、市内のPTAをしっかり見て支援することにお金と労力を使っていきたいと考えました」と、大森氏。
都道府県や政令指定都市のP連が日Pを退会した例はこれまでになかったため、京都市P連の一連の動きは、メディアで大きな話題となった。
同年5月、京都市P連理事による投票を行った結果、わずかな賛成しか得られず、日Pからの退会の提案は否決。「残念な結果となりましたが、課題を全国で共有する役割は果たせたのではないかと思います。これを機に、P連や上部団体の存在意義についての議論が深まってほしいと思っていたところ、都小Pさんの動きがありました」。
都小Pの総会では、圧倒的多数の賛成により、退会提案が可決された。
「京都市とは、採決結果が正反対となりました。退会提案が否決されたことに対し、市内でも違和感を感じた関係者も多かったように思います。京都市P連の理事の判断には何が影響したのか。対照的な結果の原因。そこに、全国に共通する、“変われない”PTA問題解決のカギがあるのではないかと考えます」
半強制加入に輪番制、時代と逆行するP連に“反旗”
「単P以上に参加のモラル(士気)が低いのに、負担だけは多大なままのP連。このままではうまく回るはずがない」と言うのは、東京都世田谷区の公立小学校で18年から20年の3年間PTA会長を務め、その活動記録や所感を書籍『政治学者、PTA会長になる』に記した岡田憲治氏だ。

2018〜20年、世田谷区の小学校PTA会長。現在は、地域学校運営委員。22年2月『政治学者、PTA会長になる』(毎日新聞出版)を出版。2人の子どもの父親
(撮影:尾形文繁)
岡田氏がPTA会長を務めた小学校は、世田谷区立小学校PTA連合協議会(世小P)に属しているが、「そもそもの問題は、P連から単Pに、加入の意思確認を行わない慣例が続いていること。つまり憲法違反です。区内61の小学校が8つのブロックに分けられ、ブロック代表の役割が輪番制で回ってくるのですが、半ば強制を伴う輪番なら『意思確認』が必要です。
しかし、ブロック代表に当たった単Pは、本部役員1名がP連の役員として駆り出されるうえに、その仕事内容はP連が決めるというのです。会長3年目のときにブロック代表が回ってきたのですが、年間20回の平日開催の会合に出席を求められる、まったく時代と逆行したような役に対し、無理やり人を立てるのは理不尽だと感じました。代替案として、3人の役員を連名で『世小P担当』とし、都合のつく人が交代で出席する旨を伝えました」という。
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