JR西、「他県より鉄分多め」で攻める岡山観光戦略 新たな観光列車に加えファン向け企画が続々

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この観光列車のプロデュースを担当するJR西日本岡山支社ふるさとおこし本部の原拓也氏は、「プロジェクトが動き出したのはおよそ2年前」と振り返る。「最も苦労したのは何か」という質問に対しては、「さまざまな意見を1つにまとめるのが大変だった」と即答だった。

多くの人の思いが1つに結実して完成した新しい観光列車。発表されている運行スケジュールはDC期間内の9月までだが、10月以降も運行予定という。

鉄道ファンの力で話題性アップ

岡山DCをPRするホームページを見ると、アートを満喫する旅、歴史に触れる旅、食を楽しむ旅などさまざまな旅のプランが提案されているが、JR西日本はちょっとユニークな企画を発表した。「おか鉄フェス2022」という鉄道に特化した観光キャンペーンだ。

ラインナップがすごい。ノスタルジーを活用したリバイバル急行「砂丘」の運行、「TWILIGHT EXPRESS(トワイライトエクスプレス)瑞風」「WEST EXPRESS(ウエストエクスプレス)銀河」「ハローキティはるか」といった人気列車の特別運行、通常は昼間走るラ・マル・ド・ボァを夕方から夜に走らせる等々。さらに津山駅では運転士が実際に訓練で使用しているシミュレータを操作できる運転士体験、また、岡山総合実設訓練センターでは小学校4年生から中学校3年生という条件こそあるものの、訓練線で本物の車両を用いて約800mの運転を行ったり車掌体験を行ったりするといったファン垂涎の企画が目白押しだ。

「かつての国鉄の岡山鉄道管理局は“岡鉄局”と呼ばれており、それに由来して“おか鉄”と名付けました」と、JR西日本岡山支社の須々木淳副支社長が話す。“おか鉄“と言われても一般の人にはまず響かないが、鉄道ファンならピンとくるものがあるはずだ。

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全国で姿を消しつつある旧国鉄型車両が多数残っている岡山・備後エリアはファンの間で「鉄道の聖地」と称される。「全国の鉄道ファンのみなさまに岡山・備後にでかけてみようというきっかけになってほしい」と須々木副支社長は期待する。

しかし、鉄道ファンだけをターゲットにしているわけではないだろう。観光列車が鉄道ファンのみならず一般の旅行客からも関心を集めていることからもわかるとおり、鉄道ファンの間で話題になったものは日々のニュースにも取り上げられる。ニュースを見ていると、鉄道はほかの話題と比べ取り上げられる頻度が多いように感じられる。おか鉄イベントが回り回って、岡山DCの認知度向上につながる可能性は高い。

岡山DCが成功を収めれば、その要因の一翼は鉄道ファンが担っているといってよいだろう。

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大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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