NEC、「5G」で脱・国内依存に本腰を入れる理由 「オープンRAN」市場でNTT、楽天と協業進める

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森田隆之(もりた・たかゆき)/1960年大阪府生まれ。1983年東京大学法学部卒業後、NEC入社。海外部門が長く、買収案件を多く手がけた。2018年4月副社長、同年6月からCFO(最高財務責任者)を兼務。2021年4月から社長。(撮影:尾形文繁)
通信分野に強みを持つITサービス大手のNECは今、グローバルの成長力引き上げに意欲を燃やしている。テコと見込むのは、基地局をはじめとした高速通信規格「5G」関連ビジネスだ。国内でもコンサルティングを通じた企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)支援に力を注ぐ。今後の戦略を森田隆之社長に聞いた。 


――2021年4月に社長に就任して1年あまり。初年度の手応えは?

コロナ禍が継続する中でビジネスを遂行するやり方をつかんだ。苦しんだ部分はあったが、部材(供給不足)の問題は8割方インパクトを吸収できた。先の見えない中でも、それなりの視界を持って経営できるとわかった。

成長領域の5Gでは商用受注を獲得し、2022年10月以降に出荷を始める。世界のネットワーク市場への本格的な再参入が現実になる。政府や金融のデジタル化分野も、アバロク(スイスの金融ソフト大手、2020年に買収)がアジアで新たな商談を獲得するなど、早い段階でシナジーを出せている。

――前期は営業減益でしたが、今2023年3月期は増益を見込んでいます。しゃがんだ後にジャンプする、という思いでしょうか。

しゃがむつもりはなかったが、体質改善や構造改革のための投資は必要だ。NECのようなハイテク領域の会社では、技術革新や市場創造に向けた投資も欠かせない。

売上高に対する研究開発費の比率も引き上げている。ただ、2023年3月期は前期に行った成長投資の一部がリターン(収益)になる。

技術を生かせていなかった

――研究開発を社会的な価値に変えていく重要性を強調しています。NECには先進的な技術がありながら、最大限に生かせていなかったという思いはありますか。

我田引水の部分があった。また、テクノロジーが世の中に普及し、高度化してきたという環境変化もある。過去には「より早く、より正確に」がそのまま価値になっていたが、今はそうではない。

「技術をどう使うかは(社会や顧客が)考えてください」では駄目で、「こうすれば経済価値、社会価値が上がります」というところまで求められる。例えば顔認証にしても、単に便利だから使おうとはならず、個人の人権や情報保護まで考える必要がある。そうした技術の実装までやらないと、その技術は世の中に生かされない。

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