関西を代表するJR新快速、指定席「Aシート」の現状 時速130kmで2府3県を貫く俊足列車の付加価値

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さて、JR西日本の京阪神圏と言えば主要駅での接続の妙が特筆されたものだ。有名な尼崎は、新快速については往時でも関係しなかったが、芦屋、三ノ宮では、一つのホーム両面に複々線で並行する新快速と普通が、着発のタイミングを合わせたダイヤで相互接続を図っていた。しかし、今はそれはない。当時、きわめて便利だったことから新快速への混雑集中を際立たせ、そのために却ってダイヤを乱すこともあった。そこで新駅開業等から普通の運転時分が変わる2016年3月の改正であえて関係を断った。現在は外線の新快速と内線の快速・普通が、それぞれのダイヤで着発している。関西の象徴とも言われた巧妙なサービスが見られないのは、単純には残念である。

複々線が外線と内線の関係から、海側に電車線、山側に列車線の関係に変化すると、須磨海岸に出てほどなく淡路島と明石海峡大橋が見えてくる。段差が付いた下の線路を普通電車が快走するものの、新快速はものともしない。

今や常識の大阪ー姫路間は1時間3分

明石、西明石と続いて停車した後は複線区間に入る。途切れなかった町並みも、駅界隈にマンションが林立する大久保を通過したところで一転、田園地帯が広がった。大阪や神戸付近とは異なる、2000年代に入ってからの新しい高架線に上ると加古川で、そこで先行の普通(明石で種別表示を変えた快速)と接続する。同じホーム対面での緩急接続は、大阪駅で普通(こちらは高槻ー西明石間各駅停車)と肩を並べて以来ということになる。

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ここまで至ると大都会を抜けて空気も和らぐが、逆に近年の発展ぶりを感じる光景も現れる。ひめじ別所と東姫路の両駅で、ひめじ別所は2005年3月、東姫路は2016年3月に開業した。前者は姫路貨物駅と隣り合っているが、姫路市内の連続立体化に向けて姫路駅の貨物施設が当地に移転、それによって姫路駅も2006年3月に高架駅となる経緯を踏んでおり、新しい姿が連なっている。

姫路への到着は13時03分だから、大阪ー姫路間は1時間3分である。距離は87.9kmであり、西明石から各駅停車の快速は1時間36分を要する。東京基準では東海道線なら根府川手前、北へ宇都宮線なら小金井付近が相当する。その界隈を日常的な往来の範囲とし、都市の発展を相当なものとした背景には、15分間隔で所要1時間を“あたり前”とした新快速の功績がある。

その先、接続の播州赤穂行き普通は4両であった。

鉄道ジャーナル編集部

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車両を中心とする伝統的な鉄道趣味の分野を基本にしながら、鉄道のシステム、輸送の実態、その将来像まで、幅広く目を向ける総合的な鉄道情報誌。創刊は1967年。

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