近鉄の"夢洲直通"に必須、「複電圧車」の仕組み 電圧異なる区間を直通可能、国内各地で活躍中

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JR東日本とJR貨物の複電圧車はすべて交流2万Vと交流2万5000Vに対応した車両だ。交流車両は入力した2万Vもしくは2万5000Vを主変圧器で適切な電圧に降圧して主回路に供給するため、出力側に切り換え機構を設ければ同じ電圧で出力することも可能だ。

山形新幹線の交流2万V区間を走行するミニ新幹線車両のE3系2000番代。ミニ新幹線は2万5000Vと2万Vに対応する切り換え機構は備えていない

しかし、山形・秋田新幹線区間に乗り入れるミニ新幹線車両のJR東日本E3系・E6系・E926形East iには複電圧用の特別な機構はない。そのため2万V区間では2万5000V区間よりも性能がやや落ちる。

ただしミニ新幹線の場合、本来の性能は2万5000Vの東北新幹線区間で発揮できればいい。2万Vの山形・秋田新幹線区間では電圧が低い分性能が落ちるものの、最高速度が時速130kmなので問題とはならない。

「四季島」も複電圧車だ

在来線車両では、JR東日本E001形「TRAIN SUITE 四季島」と北海道新幹線との共用区間で使用されるJR貨物EH800形が交流2万V/2万5000Vの複電圧仕様となっている。青函トンネルを含む北海道新幹線との共用区間が交流2万5000Vのためだ。

交流2万5000Vの北海道新幹線との共用区間を走るEH800形。EH800形も複電圧の切り換え機構を持たず、交流2万V区間ではパワーが落ちる(筆者撮影)

E001形の主変圧器は交流の電圧にかかわらず、ほぼ同じ電圧に降圧して出力できるように接触器で切り換えている。

EH800形は逆に2万5000Vで本来の性能(EH500形と同等の4000kW)を発揮できる回路構成としている。これは2万5000V区間内にある青函トンネルに連続勾配があるためだ。そのため2万V区間での出力は、2万5000V区間の約76%の3400kWとなっている。もっともEH800形が走行する2万V区間は平坦な路線、しかも単線で最高速度も低いため、出力のダウンは問題とならない。

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今後登場するであろう近鉄の複電圧車は、VVVFインバータ制御であるから特別な切り換え機構は搭載しない可能性がある。また、高速運転を行う1500V区間の性能を基本とすると考えられ、その場合、750V区間の性能はダウンすると思われる。近鉄けいはんな線・大阪メトロ中央線は最高速度が低いため問題とならないだろうが、どのような仕様となるのか今から楽しみである。

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松沼 猛 『鉄おも!』編集長

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まつぬま たける / Takeru Matsunuma

大阪府出身。明治大学文学部卒。株式会社三栄書房に20年間在籍し、編集者として世界各地を飛び回った。2008年12月から『鉄道のテクノロジー』編集長を務めた後、2013年5月に独立。現在は『鉄おも!』編集長のほか、『鉄道ジャーナル』『ニューモデルマガジンX』『カーグッズマガジン』、鉄道、自動車関連ムックなどに執筆。

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